2013年シーズンまでスーパーGT300クラスにOKINAWA-IMP SLSで参戦、ランキング5位を得ていたシフト。代表の竹内浩典は今季、GT3車両を中心とした新たなシリーズ『スーパーカー・レースシリーズ(SCR)』を立ち上げる予定だが、このレースにスーパーGT300クラス車両が出場することはできず、シフトは今季SCRに集中。GT300には出場しないようだ。
2014年からスタートするSCRは、ヨーロッパを中心に多数の車両が存在するGT3カテゴリーをメインに、GT4やワンメイクカップカー等が出場できるレース。また、スーパースポーツカーが多数参加するレースでインポートカーメーカー等の展示会や試乗会、ホスピタリティの充実による“車好きな大人達の社交場”を目指すとともに、子どもたちのクルマへの憧れを生む場を目指している。
そんなSCRの主要カテゴリーとなるGT3だが、国内にはすでにスーパーGT300クラスを中心に多数の車両が存在する。ただし、プロフェッショナルシリーズであるスーパーGT300クラスのGT3車両が他のシリーズでレースをした場合、走行データを得ることでテストを兼ねることができ、ライバルに対して有利な状況を作ることができてしまう。スーパーGTではコスト抑制のためにシーズン中のテストを制限しており、テストになる可能性がある他のシリーズへの参加はすることができない。
スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションによれば、この規則はすでにスーパーGTの2013年スポーティングレギュレーションにも記載されており、「クラスII(GT300)参加車両がGTAに届出のうえアジアン・ル・マン・シリーズに参戦する場合、もしくはGTAが認可した場合を除き、参加車両が本シリーズ以外のレースに参戦することは認められない」と定められている。この規定は、もしも他レースに積極的に参加できる資金力をもったエントラントがいた場合でも、他エントラントに対してアドバンテージを得ることができないようにする合理的な考え方と言える。
ただ、GT3車両を所有するレーシングガレージにとっては、規定上さまざまな他カテゴリーにも出場できるGT3車両をうまく活用することができれば、ビジネスになる可能性がある。スーパー耐久、GTアジア、そしてこのSCRと、プロが中心のスーパーGTではないシリーズに参戦を希望するジェントルマンドライバーやチーム等に対して車両の貸与やメンテナンスを請け負うことにより収入を得ることができるからだ。
このシステムはアジアや他地域では割と多く存在しており、例えばGTアジアに参戦するチームがアジアン・ル・マンに出場したり、イギリスGTに参戦するチームがブランパン耐久に出場したりと、さまざまな例が見て取れる。そこで竹内は、「日本のモータースポーツ発展のために」とスーパーGTのGTエントラント協会を通じ、スーパーGTに参加するGT3車両がSCRにも出場できるよう要望書を提出したという。
当然、スーパーGTに自チームで参戦してきた竹内はスーパーGT側の事情も理解しており、テストにならないようGT3車両をSCRで走らせる場合、SGTドライバーの参加の不可やSCRではタイヤワンメイクであること等、テストにならないような譲歩案も出したと言うが、スーパーGTからは取締役会の協議の上、他カテゴリーへの参加はやはり認められないという通達が出たという。
この結果を受けてシフトとしては残念ながら、1台のメルセデスベンツSLS AMG GT3を使ってSCRでユニークなレンタル参戦システムを行う予定があることから、今季のGT300参戦は不可能と判断したと明らかにした。
一方、開催に向けて準備が進められているSCRについて竹内に聞くと、現状確定しているエントリーは4台だという。ただ、噂によれば5台目もほぼ確定。また、台湾チームが参入を決めていると言われており、その他にも参戦を検討しているエントラントは多いという。「20台集まると面白くなる」と竹内は語る。
また、現在アジア圏で行われているGTアジアとの連携もさまざまな話が進められているとのことで、年末にヨーロッパからも多数のエントリーが集まりレベルの高い戦いが展開されているマカオGTカップに、SCRの上位が出場できるようにする等の交渉も進められているという。
プロのシリーズとして競技の公平性を求められるスーパーGTと、ジェントルマンドライバーが主体となる他シリーズの間では求められる事情は異なる。このあたりの選択は今後課題になっていくかもしれない。人気、露出はスーパーGTが圧倒的に上であるため、ガレージにとっても選択は難しいところだろう。
なお、2014年スタートのSCRの現在、そしてエントラントの声については、31日発売のオートスポーツNo.1374で掲載するので、こちらもぜひご覧頂きたい。