今年は石浦宏明が初のシリーズチャンピオンに輝いた全日本選手権スーパーフォーミュラ。早くも2016年のシート獲得のために国内外のドライバーが多数動きを見せており、近年では例がないほどシート争奪戦が激化している。

 中でも注目を集めているのが今季GP2王者のストフェル・バンドーンのゆくえ。11月25日〜26日に鈴鹿サーキットで行われたメーカーテストにも、スケジュールの関係で1日目のみだが参加。本人もスーパーフォーミュラに興味を示しており「まだ分からないが、良い感触だ」と来季参戦についても前向きなコメントを残していた。ヨーロッパからの情報、そして国内テスト現場での雰囲気と合わせて、2016年に参戦するのはほぼ確実な状況だと言える。

 となると、注目点は所属チーム。テストでも参加したDOCOMO TEAM DANDELION RACINGが最有力と見られているが、ダンデライアンには他の候補者も殺到している。11月のメーカーテストにはバンドーンに加え、ステファノ・コレッティ、ジャズマン・ジャファーが参加。彼らも当然、SFのシートを狙っている。もちろん、開幕戦で3位を獲得したナレイン・カーティケヤン、そして今年も2度の表彰台を獲得した野尻智紀も候補者に加わっており、SF参戦チームの中ではもっとも候補者の多い激戦区になっているようだ。

 その中ではバンドーンが有力で、次点で野尻が有力とみられるが、ホンダの若手筆頭の野尻といえども、シートは安泰ではない。今季の野尻は、第5戦オートポリスと最終戦鈴鹿のレース2以外では全てポイントを獲得。予選でも第3戦富士を除く6戦でQ3進出を果たすなどホンダ勢の中でも山本尚貴に匹敵する安定した強さを発揮。成績面からも残留は確実かと思われたが、ヨコハマタイヤを装着しての初テストでは2日間ともドライブする機会を与えらえなかった。ホンダの数少ない若手ドライバーの中で実績を重ねてきた野尻にとっても、SFのシートは絶対安泰とは言えない状況なのかもしれない。

 またホンダ陣営の動きとしては、TEAM無限が来季は2台参戦に戻す方向で体制を進めているようだ。TEAM無限の16号車は山本尚貴でほぼ確定だが、気になるのは復活予定の15号車。先日のテストではGP2ドライバーのリッチー・スタナウェイがドライブしたが、そのままスタナウェイが簡単に決定ということにはならなそうな状況で、誰が収まるのかに注目が集まる。ダンデライアンの動向次第では、野尻の移籍というサプライズもありえるのかもしれない。

 一方のトヨタエンジン勢では、初のドライバーズチャンピオンを獲得した石浦宏明が僚友の国本雄資とともにP.MU/CERUMO・INGINGに残る模様。チームチャンピオンを獲得したPETRONAS TEAM TOM’Sもアンドレ・ロッテラー、中嶋一貴のコンビで不動か。最終戦でのチャンピオン記者会見に出席した舘信秀監督も「2人が乗りたいというのなら、喜んで乗せる」と明言。最終的にWECのスケジュールを回避する形でSFのスケジュールも確定したため、2人の残留は濃厚となっている。

 ところが、トヨタ陣営ではセルモ、トムス以外のチームで動きがあると見られている。中でも注目なのはKYGNUS SUNOCO Team LeMans。今年レギュラー参戦の機会を逃したロイック・デュバルが来季復帰の機会を求めて動いている模様。そうなれば小林可夢偉、平川亮とともに2枠のシートを3人で争うことになる。メーカーテストでのタイムを見るとデュバルが少し出遅れてしまった感はあるが、2014年参戦時も表彰台4回と彼の速さは折り紙つき。ふたつのシートに誰が収まるのか、目が離せない。

 また、LENOVO TEAM IMPULは11月の鈴鹿テストでドライでもウエットでも速さをみせていた関口雄飛がそのままシートを獲得する流れになってきている模様。アンドレア・カルダレッリは先日アブダビで行われたGP2合同テストに参加。そのまま来季は活躍の場をGP2に移す可能性もある。11月のメーカーテストに急きょ招集された関口は2日間通してアグレッシブな走りを披露し、星野一義監督をはじめチーム首脳陣に好印象を与えていた。

 そして近藤真彦監督率いるKONDO Racing。ジェームス・ロシターの残留は濃厚で、そのチームメイトに今季の全日本F3王者に輝いたニック・キャシディがステップアップしてくるようだ。キャシディは、先日のテストでもロシターと同等のタイムを叩き出していた。もちろん、今季参戦したウィリアム・ブラーも残留を狙っていることは確実で、他チームでのシート争いに敗れたドライバーが雪崩れ込んでくる可能性もある。2台体制に戻って2年目、ラインアップ次第ではKONDO Racingにとって飛躍のシーズンになるかもしれない。

 どの移籍情報に関しても、まだまだウワサの域を脱しないものが多く、最終的には来年1月下旬から2月に行われる各メーカーの体制発表を待たなければならないが、ホンダ勢ではバンドーン、トヨタ勢ではデュバル、キャシディあたりの動向が鍵を握ることになりそうだ。

 そして、もうひとつ言えることは、以前と比べても海外からスーパーフォーミュラ参戦を希望する速さと実績を重ねたドライバーが増え始め、スーパーフォーミュラのシート獲得競争が激化していることは間違いない。今年まで当たり前のように参戦していたドライバーも、来年はシートがなく、ガラリとラインアップが変わるということが十分にありえる状況となってきているのだ。

 それだけ、スーパーフォーミュラのレベルの高さ、カテゴリーの魅力が海外にも認められ始めている証拠なのだろう。

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