バルセロナ合同テスト初日。新生ルノーF1はトラブルが出たこともあって、11チーム中最下位という成績だった。昨年までのロータスを買収しての再出発。しかしサーキットで出会った、あるルノー関係者は「実は本命はロータスではなかった」と内情を話した。
「我々はロータス以外にもザウバーやトロロッソと、かなり突っ込んだ話し合いをしていた。ザウバーの魅力はBMW時代に充実させた素晴しい開発設備だ。いまでも十分に通用するもので、使い方次第では、かなりの伸びしろが期待できた。しかし思った以上に負債額が大きかったことと、スイスという立地の不利からあきらめた」
「選択肢の中で、一番魅力的だったのはトロロッソだ。車体開発能力は3チームでピカイチだったからだ」
ところがオーナーであるレッドブル総帥ディートリッヒ・マテシッツが、売却を拒否。「ルノーのパワーユニットを搭載し、ルノーカラーの黄色に塗ってもいい。しかし売るのは断る」と言われたのだという。そのため最終的に、かつて所有していた英国エンストンのファクトリーを買収することにした。
「(元オーナーである)ジニー・キャピタルの残した借金の整理や、エンジニアたちが流出したことで低下した技術開発力の底上げなど、やることは山ほどある。おまけにジニーはチームをメチャクチャにしておきながら、結局10%の株式を手放さずに居座ったんだからね」と、かつてのルノーF1時代からエンストンと仕事をしてきたエンジニアは、ぼやくことしきりだった。