F1をはじめ、世界のさまざまなモータースポーツシーンで、日本人が活躍している昨今。アメリカを舞台に戦われるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のトップカテゴリーでも、ひとりの日本人メカニックが奮闘しています。
このコラムでは、BMWのワークスチームで働くベテランメカ・小笹氏の目線で、レースの裏側やアメリカでの生活、異国で働くことの醍醐味などを、硬軟ごたまぜに、ユルユルと紹介していきます(月1回程度の更新を予定)。第1回のデイトナ24時間編に続きまして、今回は第2戦セブリング12時間レースの裏側をお届けします。WEC世界耐久選手権とのジョイントイベントとなった今回も、なかなかハードな一戦だったようですよ……。
■まずはワイルドに、柱を切断しよう!
日本のレースファンの皆さんこんにちは、メカニックのトミー小笹です。以前はトムス、ニスモなど日本のチームでメカニックをしていましたが、昨年からアメリカで働いていまして、今年からはIMSAのGTPクラスに参戦するBMW Mチーム RLLで、24号車BMW Mハイブリッド V8を担当しています。
コラム第2回、さっそくですが先日のセブリング12時間の裏側をレポートしたいと思います!
今回は設営を開始して早々、トラブル発生です。
開幕戦のデイトナはサーキットの常設ガレージを使うのですが、今回からはパドックに停めたトレーラーの間にテントを張る形で、メンテナンススペースとなる簡易ガレージを作り上げます。
RLLとしても今年はプロトタイプ車両の2台体制になるということでこのテントを新調したのですが、届いたのが積み込みの日ギリギリになってしまい、現場に着いてから初めてちゃんと組み上げることに。そこで、1本だけどうしても「これ、長すぎるよね?」「絶対、間違いだよね?」という柱が出現してしまったんですよ。で、「どうする?」「しょうがない、切ろう」となり、その場でノコギリで切るという突貫作業を敢行。いやぁ、アメリカって感じですねー(笑)。
セブリングでは2月にテストもしていますけど、なかなかコースに歩いて出る機会はありませんでした。今回はBMWの写真撮影があったので、バックストレートエンドのあたりまで行ったのですが……「ここ、本当にコース上?」っていうくらい、路面が荒れてて驚きましたね。「インディアナの一般道より酷いぜ?」って(笑)。
その最終コーナー手前のイン側にあるオフィシャルポストも、ものすごい簡素な作り。セブリングはアメリカの耐久レースの原点とのことですが、いろいろと“原始的”なままの作りになっていて面白かったです。
セブリングは金曜決勝のWECと土曜決勝のIMSAが併催。広ーいパドックは、IMSAとWECでかなり距離は離れているのですが、時間のあるときにWEC側もブラブラと見に行ってみましたよ。
途中にはミシュランのタイヤサービスがあるんですけど、2シリーズ併催ってことで、これがまぁデッカい。写真じゃ伝えきれないんですが、こんなの見たことない、というくらいの大きさで驚きました。
WECではハイパーカー勢を、なんとなく視察。いやぁ、フェラーリのピット内のオーバーヘッド(・コンソール)、すごかったですね。あれはカッコ良かった。「トミー、クルマ撮ってるの?」って仲間に聞かれましたけど、「ううん、ピット」って感じで釘付け(笑)。さすがフェラーリ、でしたね。
ハイパーカーは規則上、フロントにモーターを搭載しているので、フェラーリ499Pではそれらを冷却するための熱交換機もフロント側に付いているように見えました。なんだか昔のニッサン(GT-R LM NISMO)みたいで、前からクラッシュしたら大変そうだよな、とかつい余計なことが頭をよぎってしまいました(笑)。