レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

ル・マン/WEC ニュース [PR]

投稿日: 2023.09.27 11:56
更新日: 2023.09.27 11:38

『もうひとつの選手権』誕生でドライバーが密かに白熱。“シングルスペック”が演出する競争と、ガレージ56の効能

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


ル・マン/WEC | 『もうひとつの選手権』誕生でドライバーが密かに白熱。“シングルスペック”が演出する競争と、ガレージ56の効能

 グッドイヤーは2019年からWEC(FIA世界耐久選手権) LMP2クラスへのタイヤ供給を開始し、2021年からは単独サプライヤーを務めている。LMP2クラスは、事実上オレカ07シャシーとギブソンエンジンによるワンメイク状態となっていることもあり、毎レース僅差で見逃せない戦いが続くカテゴリーだ。

 そのLMP2用タイヤを含め、2023年シーズンの活動について、レース・プログラム・マネージャーのマイク・マクレガー氏と、モータースポーツ・マーケティング・マネージャーのトニー・ウォード氏に、第6戦富士の現場で話を聞いた。

■大成功だったル・マン24時間『ガレージ56』挑戦

 まず、2022年シーズンとの変化点について、マクレガー氏は次のように説明する。

「タイヤ自体に変更はありませんが、2023年は大きな変化がありました。タイヤヒーティング(タイヤウォーマー)の廃止です。これは我々にとって大きなチャレンジで、昨年は多くのテストを行いました。そのおかげもあり、成功裏に推移しています」

「ドライバーは1周目から高いパフォーマンスに満足してくれています。スパでは外気温4℃の低温を経験しましたし、(テストを行なった)スペインでは外気温47℃を経験しました。大きな試練でしたが、シングルスペックのタイヤで乗り切ることができています」

 マクレガー氏も言うように、グッドイヤーではスリック、ウエットともに、それぞれ1スペックのタイヤで、すべてのレースをカバーしている。ル・マン24時間レースでは5スティントをこなし、デグラデーションの面でも高い性能を備えていることを証明した。

2023年ル・マン24時間レースのLMP2クラスを制したインターユーロポル・コンペティション
2023年ル・マン24時間レースのLMP2クラスを制したインターユーロポル・コンペティション

 2022年は全6戦だったが、2023年のWECは1戦増え全7戦になった。「特別な準備を行ったのか?」の質問に、マクレガー氏は「いつもと同じです」と答えた。

「毎年、WECがカレンダーを発表した瞬間から、シミュレーションプログラムを始めます。2024年はカタールがカレンダーに追加になり、サンパウロが(10年ぶりに)戻ってきますが、我々はすでにシミュレーションを済ませています。再舗装されたカタールについては舗装業者にコンタクトをとり、どんな材料を使って舗装したのか、キャンバー(路面の傾き)はどうなのか、路面に関するデータを入手しました。すべてのサーキットについて、隅々まで理解するよう努めています」

 今年6月の第4戦ル・マン24時間レースは、グッドイヤーにとって特別なイベントだったに違いない。なぜなら、ガレージ56枠で参戦したNASCAR車両のシボレー・カマロZL1向けに、特別なタイヤを開発したからだ。「多くを学びました」とマクレガー氏は言う。

「我々が過去にル・マンで走らせた車両とは空力的にも、パワー面でも、重量面でも大きく異なりました。ガレージ56向けのタイヤ開発は、技術面で我々に多くの進化をもたらしました」

「『グッドイヤー・サイトライン』もそのひとつです。TPMS(タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム)の一種で、従来のTPMSのようにホイールに装着するのではなく、タイヤに装着するのが特徴です。この技術を将来どのように活用していくかについて、貴重な知見を得ることができました」

「大成功でした」と、マクレガー氏は2023年のル・マン24時間を振り返る。

「ガレージ56のタイヤに関しては極めて短い期間で集中的に開発しました。車両は高いパフォーマンスを発揮しました。LMGTEアマクラスと同等のパフォーマンスを予想していましたが、彼らのパフォーマンスを上回ったばかりか、無事に完走することができました。とても印象に残るレースでしたし、グッドイヤーの高い技術力を示すことができました」

2023年のル・マン24時間レースに特別枠『ガレージ56』から参戦したNASCARのシボレー・カマロZL1
2023年のル・マン24時間レースに特別枠『ガレージ56』から参戦したNASCARのシボレー・カマロZL1

 成功といえるのは技術面だけではない。マーケティングの観点からも、2023年のル・マン24時間は成功だったと、ウォード氏は総括する。

「2023年は特別な年です。ル・マン24時間は100周年、グッドイヤーは125周年、NASCARは75周年です。レースはグッドイヤーのDNAの一部。F1で最多勝を記録し、ル・マン24時間では最も多く総合優勝を果たしています。2023年のル・マン24時間は過去最多の入場者数を記録しただけでなく、テレビの視聴者数やソーシャルメディアのエンゲージメントも過去最高を記録しました。ブームが来ており、来年は数字がもっと大きくなると思っています」

 WECにおけるLMP2カテゴリーは2023年シーズンをもって終了。2024年からはLMGTEアマにかわってFIA GT3車両による『LMGT3』カテゴリーがスタートする。そのLMGT3にタイヤを供給する単独サプライヤーにグッドイヤーが指名された。

 新たな挑戦が始まることになるが、LMP2向けタイヤの開発で得た知見が活かされるのは確実。マクレガー氏はLMP2のタイヤ開発を通じて大きな収穫があったことを認める。

「LMP2へのタイヤ供給を始めたとき、私たちは5種類のスペックを用意して条件の変化に対応していました。現在はシングルプロダクト(1種類)です。すべての条件に対して、1種類のドライタイヤで対応しています。ウエットも同じ。ロードタイヤのEAGLE F1 SUPERSPORTはダイレクトに、LMP2のタイヤ開発を通じて得た知見を反映しています。高温条件下で走る際、ドライバーは自信を持って走ることができる。我々がLMP2のタイヤ開発を通じて学んだことは、とても価値あるものでした」

LMP2クラスにタイヤを供給し、現場でのサポートも行うグッドイヤー。2024年は新設されるLMGT3クラスにタイヤを供給する
LMP2クラスにタイヤを供給し、現場でのサポートも行うグッドイヤー。2024年は新設されるLMGT3クラスにタイヤを供給する

■ドライバーの心に火をつけた『ウイングフット・アワード』

 今季、グッドイヤーの発案で始めたプログラムで、LMP2ドライバーをザワつかせたものがある。レースごとに贈られる『グッドイヤー・ウイングフット・アワード』だ。最大限のパフォーマンスを発揮し、複数のスティントでコンスタントなラップタイムを記録したドライバーに与えられる。

 これは耐久レースを戦うドライバーにとっては栄誉に違いなく、新たな競争心を芽生えさせる原動力になっているようだ。

今季LMP2クラスに新設された『グッドイヤー・ウイングフット・アワード』のトロフィー
今季LMP2クラスに新設された『グッドイヤー・ウイングフット・アワード』のトロフィー

「我々のタイヤのフィロソフィーは、高いレベルの耐久性にあります。そこで、速いラップタイムをコンスタントに記録する究極のパフォーマンスを見せたドライバーに賞を与えたいと考えました。1周や2周を速く走るのは簡単。賞を与えるに値するドライバーは複数のスティントにわたって高いパフォーマンスを発揮したドライバーです」と、ウォード氏は説明する。

 2スティントに渡る平均ラップタイムが最も優れたドライバーに賞が与えられる(ル・マン24時間は3スティント平均)。公平を期すため、セーフティカー導入中やイエローフラッグ提示中のラップは除外し、いわゆるクリーンラップだけカウントする。「パドックでは新たな競争が生まれたようです」と、マクレガー氏はほほ笑む。

「オレのほうがあいつより速かったはずだけど、どうしてなんだ」というような問い合わせがあったそう。LMP2ドライバーの注目を集めている証で、「驚きでした」とマクレガー氏。

 このウイングフット・アワード、先の富士6時間レースでは、ユナイテッド・オートスポーツ22号車のフィリペ・アルバカーキが受賞。チームWRT41号車のロバート・クビサと年間表彰を懸け、最終戦バーレーン8時間レースに臨むことになる。最終戦では彼らのアベレージラップにも大いに注目したい。

 ドライバーやファンからの好反応を受け、2024年のLMGT3でも『グッドイヤー・ウイングフット・アワード』は継続する予定だという。グッドイヤーは耐久レース車両の足元を高い技術力で支えるだけでなく、ドライバーのモチベーションを高める役割も果たしている。

毎回僅差の戦いが繰り広げられるWECのLMP2クラス
毎回僅差の戦いが繰り広げられるWECのLMP2クラス


関連のニュース