──開発テストに関しても、そういった精神のもとに進めているのでしょうか。
上野:まさにそうです。クルマやタイヤ、そして燃料の開発に関しても、ドライバーがファンに対してアピールできるレースをどうやって作るか、というところがベースで、ドライバーが乗って楽しいクルマにしよう、走って楽しいレースにしよう、と。結局、ドライバーが一番の“メディア”なわけですから、ドライバーがつまらないと感じるレースであってはいけない。たとえ負けたとしても、ドライバーが「楽しかった」と言えるレースを作るのが我々の理想です。
したがって、サステナブルであることはとても大事ですが、JRPの立場としては『パフォーマンスを下げてまで再生素材を使うのは、いかがなものなのか』という疑問も大事にしたつもりです。お客様にお見せするパフォーマンスを維持したうえで、SDGsに寄与する開発をすることに価値がある、と。その部分について、関係各社としっかりと認識を統一した上で進められたことは、本当に良かったと思っています。
ドライバーが速さを競う道具としての正しい姿をきちんと維持していただきながら、社会的な課題もクリアしてもらったところに関しては、我々もすごく感謝しています。ヨコハマさんのタイヤも、最初は再生可能原料比率が約33%だったところが、昨シーズンからは約46%にまで高めてくださいましたし、それでいて競争力の高さは保っていただいていますので、その開発のご尽力に非常に感謝しています。
テストに関しても、トヨタさん、ホンダさん、そしてヨコハマさんという三者が一緒になって開発に取り組むなんて、前代未聞じゃないですか。開発テストのミーティングは僕も出席していますけども、結構みんなダイレクトに物を言うんですよね(笑)。つまり、互いに気を遣うような雰囲気ではなく、面と向かって言い合える関係性ができている。そこは単なる文字上の『パートナーシップ』ではなくて、「本当にいいものを作ってお客さんに見せましょう」という『共創』の精神そのものだと思いますし、みんなが同じベクトルを向いてテストができているのは、すごく大きなことだと思いますね。


■今後は海外展開も視野に入れるも「ただ開催するだけ」ではない
──今季から導入されたセルロースエタノール混合燃料に関してはいかがでしょうか。
上野:僕個人の思いとして『国産』へのこだわりがあったため、他のプロモーターさんや協会さんからは少し遅れての導入になりました。国内での精製技術の向上にも寄与したいと考えていましたし、国内で作られた非可食の原料を使い、震災復興で町おこしをしている福島県大熊町で地元の人たちによって精製されたエタノールを、たとえ10%であっても配合した燃料を使ってレースができるというのは、社会的な意義も含めて、大きいものだと思っています。
──最後に、スーパーフォーミュラを今後どう発展させていくのか、上野社長のビジョンを教えてください。
上野:やはり、海外に目を向けたいと思っています。ただし、それは単に「海外で開催する」ことが目的ではありません。我々のシリーズにはイコールコンディションの車両とタイヤがあり、真のドライバーズ・レースが展開できている。その部分に関しては、世界的に見ても我々独自のポジションを築けていると自負しています。
それを海外の人たちが評価してくれて、「このレースを開催したい!」と思う人がいるところで、レースができたら嬉しいですね。「単に海外でやることが目的ではない」とは、そういった意味です。ちゃんと我々が50年培ってきた日本のトップフォーミュラのIP(知的財産)を評価してくれる人たちとタッグが組めるのであれば、どこへでも行きたいと思っています。

