──最初の作例からかなり盛り上がってしまいました(汗)。というわけで、予定の一連をひとつ飛ばして、早くも最後の一連に行きましょう。これは結構な枚数が後藤さんから送られてきまして。まずは意図をお聞きしましょうか。

後藤:はい、これは「セッション終了後に監督やエンジニアと話している」というよくある風景なんですけど、西陽がキレイにピットに入り込んでいたので、このポジションで結構動かずに粘って撮ったカットです。表情まで含めて、狙って撮った写真ですね。

──オフィシャルフォトグラファーとして特定のドライバーの顔を抑えなければいけないとき、どうやって・どこで待つか、みたいな部分も大変かと思います。

小林:そうだね。

後藤:こうやって長いレンズでピットの外から撮る場合、もちろんドライバーやエンジニアさんの動きも予測できない部分もあるし、それこそ間にメカニックさんが入ってしまって「あぁ、ポジション取り失敗……(涙)」ってなる場合もあるじゃないですか?

小林:あるよね。もうそれは仕事しているところを撮らせてもらっている以上、仕方がないのよ。「念じる」のみ(笑)。

後藤:ですよねぇ。

小林:最初の方のカットの状況だったら、僕だったらまずは自分が左に動けないかを考える。でも、行けない状況だったんでしょ?

後藤:行けなかった……かな? そこは私の反射の遅さもあったと思いますし(笑)、手前の片岡監督がちょっとでも動けば小林選手の顔が撮れそうだったので、それで粘ってしまった部分もあります。でも、時間がない状況だったら、その粘りは良くないですよね。

──ただ、左に動くとなると当然一回ファインダーを外して、自分が動くスペースを確認するわけだから、それをやっている間に……

後藤:笑顔がなくなっちゃったらどうしよう! って思っちゃうんです(笑)。

小林:それはもう、賭けだよね。もしかしたら全然撮れないかもしれないけど、逆にもっといい画が撮れるかもしれない、と判断して移動するわけだから。だから、言い方は悪いけど、オフィシャルフォトグラファーとしては、「とりあえず、撮れるものを撮る」。まずはそれを抑えておいて、そこから「もっといい表情にならないかな」と思って粘るのがいいと思います。

後藤:はい!

小林:あと、動けないんだとしたら、僕だったら最初の4枚くらいはシャッター押さないな。後藤さんは正直者だから、一番最初のところから提出してくれているので、こういった指導ができるんだけど(笑)。で、後藤さんとしてはこの流れの中で、どの表情が一番いいの?

後藤:「12」「13」あたりですかね。

──カメラ目線のように感じるカットですね。

小林:僕もそのあたりかなぁ。最後の2枚(14、15)はないかな。口元が不自然じゃない?

後藤:え、待ってください! これも私は結構悪くないと思ってるんですけど……。なんか、「うーん」って考えている表情にも見えるんです。

──どうでしょう、私もギリギリでアリな気がしますかね。

後藤:2枚とも納品して、普通に使ってもらえるなら「12」「13」、セッティングに悩んでる風な文脈だったら「15」もありなんじゃないかな、と。もちろん1枚だけしか選べないなら、「12」か「13」の方なんですけど。

小林:なるほど、そうきましたか(笑)。僕はね、悔しそうな顔にしても何にしてもそうなんだけど、「ドライバー本人が見た時に、嫌がらない表情を選びたい」という思いがある。

後藤:なるほど、素晴らしいですね。

小林:例えば悔しい顔であっても、本人が見て「そうだよな、俺、こんな表情しちゃうよな」と納得してもらえるような写真を、こっちの勝手ではあるけど選んでいるつもりなの。

後藤:だから口元が中途半端だったり、仕草の途中みたいに見える写真は選ばない、ということですよね。

──分かりました、ではこれ、あとで小林選手本人に写真を見てもらって、アリかナシか白黒つけてもらいましょう!

小林:いいじゃないですか、そうしてみてください。あとはさ、ドライバーが「いま、俺を撮って!」というオーラを出す時があるでしょ?

後藤:私、そこはまだ感じ取れていないかもしれないです……。あ、でも牧野(任祐)選手とかは、撮りやすいところで止まってくれるイメージはありますね!

小林:そう、それそれ。彼の場合は自分でもカメラをやっているし、はっきりとそういう瞬間はあるよね。そこは信頼関係でもあるわけだから。

後藤:あと牧野選手って、絶対にスポンサー名がこちらに見えるように物を持ってくれたりとかするので、「あ、これを撮らなきゃ」って思うんですよね。

小林:スポンサーあっての選手、という部分もあるわけだから、考える人はちゃんとそういったことも考えて行動しているよね。

■番外編:写真とともに小林利徠斗選手の元へ……

──というわけで後藤さんとともに、メディアミックスゾーンにやってきました。小林利徠斗選手に、例の写真を見てもらいましょう!

後藤:もてぎで撮った写真なのですが、ご本人としてはどちらがいいでしょうか?

小林選手:……こっち(13)ですかね。

後藤:そうですよねぇ!

──もしこの2枚があるのに、「15」を使われてしまったら、あまり気分は良くないものでしょうか?

小林選手:……まぁ、そうですね。

後藤:1枚だけなら絶対「13」を選ぶんですけど、もし2枚納品できたら、記事の内容次第で、ちょっと「考えている顔」として「15」もアリかな、と思ってしまって。

小林選手:あ、でも、それもすごく分かります。

後藤:ありがとうございます! ご本人として、使われたら嫌な表情とかタイミングが分からなかったので、ちょっと聞いてみようと思いまして。

小林選手:それでいくと、僕、あまり自分の素顔があまり好きではないので……。

──でも、より良い表情があるならそちらを使って欲しい、ということですよね。

小林選手:そうですね。……なんだか、やかましいこと言ってすみません。

後藤:いえいえ! 教えてもらえてめっちゃありがたかったです。これからもよろしくお願いします!

■Profile
ごとう ゆうき
2019年よりレースアンバサダーとして活躍。写真を撮られているうちに撮ることにハマり、フォトグラファーの道へ。Nikonが展開するスポーツファンのための推し活写真サービス『フォトサポ』アンバサダー。スーパーフォーミュラでオフィシャルフォトグラファーを務めるほか、KYOJO CUPでも公式フォトグラファーとして活動する。愛称は「きのちゃん」。愛知県出身。
https://www.kinochan.fun/

こばやし みのる
日本大学藝術学部写真学科を卒業後、二玄社CAR GRAPHIC写真部に入社。クルマおよびモータースポーツ写真を中心に撮影を続け、やがてフリーランスに。2009年より日本レース写真家協会(JRPA)会長。スーパーフォーミュラのオフィシャルフォトグラファーを務めている。1955年生まれ、神奈川県出身。
https://minoru-kobayashi.com/

後藤佑紀と学ぶSF写真道Season 2
スーパーフォーミュラでオフィシャルフォトグラファー兼フォトサポアンバサダーを務める後藤佑紀さんと日本レース写真家協会(JRPA)の小林稔会長

本日のレースクイーン

益田アンナますだあんな
2026年 / スーパーGT
アサヒドライゼロアンバサダー
  • auto sport ch by autosport web

    20歳でスーパーGTの最高峰に挑む“新人”小林利徠斗に迫った『FORMATION LAP』2026年第1弾が6月5日に公開

    ふつうとちょっとズレてる──20歳で最高峰に挑む新人ドライバー【FORMATION LAP Produced by auto sport】2026 Episode 1

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