●新オーバーテイクシステムで接近戦、順位変動が増加
レースをご覧になった方はお分かりのように、サイド・バイ・サイドが増え、オーバーテイクシーンも随所に見ることができた。ビジュアル面でも視認性はSF19の時よりアップしているのではないだろうか。次の項目に挙げたソフトタイヤとミディアムタイヤのタイム差が大きいことも、順位の入れ替わりが多い展開の要因となった。
●ソフトタイヤとミディアムタイムの予想以上のギャップ
実質、開幕前の2回のテストではレースディスタンスを通して走ることができなかったため、ソフト/ミディアムタイヤの比較やライフは手探りな状況で開幕戦を迎えることになった。結果としてはソフトタイヤでのラップタイムがミディアムタイヤを大きく上回り、ソフトタイヤのライフは想定以上に長かったようだ。
2位になった山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が会見で「ミディアムとソフトというより、ハードとソフトというくらいグリップ差が大きい感じですね。ミディアムをあんなに機能させられないとは思わなかった」と話せば、中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)は「タイヤの特性はちょっと理解するのが難しい」と表現。石浦宏明は「今後はレースでミディアムタイヤでの周回をできるだけ少なくして、ソフトタイヤを長く使う戦略になるので、次から週末の組み立ても変わってきますね」と、実戦でのタイヤの印象に多くのドライバーが驚かされた様子で、まだまだ、タイヤ特性は掴み切れなさそうだ。
●予選Q1の難しさと、予選の勢力図は大きく分かれる傾向か
ソフトタイヤでのグリップは多くのドライバーが手応えを感じている一方、ミディアムタイヤに関してはほとんどのドライバーが自信を得られていないようで、予選Q1はグリップ感が薄いままアタックに入る状況となったようだ。そのためか、今回の予選Q1では飛び出しやスピンなどが多発して3度も赤旗中断する内容となった。ほとんどのドライバーが『予選Q1を突破できれば』が最初の目標になっており、20台から12台に一気に台数が絞られるQ1はどのドライバーにとっても週末最初の鬼門となる。スターティンググリッドが重要なフォーミュラレースながら、ポールポジションを争うQ3と同等に昨年以上にQ1の緊張感が高いのが興味深いところだ。
また、テストで好調だったチームがそのまま上位グリッドを獲得しており、SF19の一発の速さに関してはナカジマ、インパル、、ダンデライアン、KONDOが抜けている印象だ。予選Q3では参加した8台のウチ、結果的に上位4台がホンダ勢、5~8番手がトヨタ勢となったエンジンウォーズも今後の展開を見守りたい。
●新人ドライバーにトラブル、アクシデントが集中
予選で3度赤旗が提示され、決勝では4度セーフティカーが導入されるという荒れた週末となった開幕戦。新型車両導入で勢力図がリセットされながらも、結果的に昨年最終戦での表彰台3人が今回の決勝でもトップ3になったことは偶然ではないだろう。開幕戦のレースは荒れた展開となったが、その要因としてマシントラブルだけではなく、レースのモラル/認識の違いと、ドライバーレベルの差の大きく目立つことになった。
今季のスーパーフォーミュラには7人のルーキードライバーがシリーズ参戦することになったが、決勝では5人がリタイアとなった。もちろん、ドライバーの責任ではないトラブルも含まれているが、外国人ドライバーを中心にクラッシュや危険な飛び込みが多く見られた。中嶋一貴とハリソン・ニューウェイは予選でもクラッシュし、決勝でも再び絡んで2台ともにリタイアとなったが、その内容がある意味、衝撃的だった。
高速コーナーのデグナーひとつ目で中嶋一貴のインにニューウェイが飛び込み、ニューウェイが一貴を押し出すように2台は高速状態のままコースアウト。ラインが実質1本しかないデグナーひとつめのでのオーバーテイクに、多くのレース関係者が首を傾げた。
