レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

投稿日: 2019.12.23 18:00
更新日: 2019.12.23 22:00

サーキット観戦に不可欠のピエール北川さん。アスリート顔負けの体調管理で実況に臨む【サーキットのお仕事紹介】

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


スーパーフォーミュラ | サーキット観戦に不可欠のピエール北川さん。アスリート顔負けの体調管理で実況に臨む【サーキットのお仕事紹介】

 普段は厳密な体調管理をしないというピエールさんだが、レースの週末を迎えると、その方法は一転して厳しいものになる。

 まず、実況を行う部屋ではエアコンを使用しない。喉のケアという点ではイメージしやすい方法だが、「体が冷えると喉にも良くない。免疫力も落ちますからね。体が冷えて喉を潰すことが多かったので、あえて発汗するくらいの方が調子はいい」と体を冷やさないことに気を使っている。

 そして驚かされたのが、実況中の水分のとり方だ。これを工夫することで、長距離のレースでもしっかりと水分を摂取することができるとピエールさんは話した。

「たとえば今年の(スーパーGT第5戦)富士500マイルレースや昔の鈴鹿1000kmなどでは、脱水症状を避けるために朝からできるだけコーヒーを飲まないようにしたり、(実況中は)あまりトイレにも行けないので、食事の量を減らしてゼリーなどを食べていました」

「あとは前日の夜かレース当日の朝からOS1(経口補水液)しか飲まないようにしています。普通の水だと体が吸収するのに時間がかかり、すぐにトイレに行きたくなってしまうので、少しずつOS1を飲みながら水分のコンディショニングをしています」

「そうすると水分もとれて、それほどお腹いっぱいにもならない。富士500マイルの時は、レース中はトイレに行ってないんじゃないかな。それでいて喉も枯れずに喋っていました」

 レースアナウンサーとして25年のキャリアを持つピエールさんとはいえ、常に平常心で予選やレースのスタートを迎えるわけではない。ドライバーやレースを見ているファンと同様に、緊張する瞬間がある。

「確かに緊張しますが、僕は良い意味で忘れやすい性格なので、いいことも失敗したこともすぐに忘れてしまいます。実況はほとんどアドリブで、周りが『あの実況おもしろかったね』と言ってくれるけれど、覚えていないこともよくあります」

「たとえば年に1回の鈴鹿8耐(鈴鹿8時間耐久ロードレース)では、みんながそこに向けて頭を下げてスポンサーを獲得しにいったり、ケガをしながらも練習したりしていますよね。そういう話を聞いたうえでスタートのカウントダウンをする時は、ヤバイぐらい緊張します」

「でも緊張がピークになるのは、やっぱり決勝レースのスタートです。あとは終盤のチェッカー間際に逆転劇がありそうな時や、後方からすごい追い上げが来た時もそうですね」

サーキット観戦に不可欠のピエール北川さん。アスリート顔負けの体調管理で実況に臨む【サーキットのお仕事紹介】
土屋武士さんとスーパーフォーミュラの場内実況を行うピエール北川さん

 そんなピエールさんが『レースアナウンサー冥利に尽きる!』と感じる瞬間はというと、「自分で取材をしてエンジニアやドライバーさんに聞いたことと、自分の経験上『このサーキットはこういう展開になるかな』というのが全部組み合わさって、自分の予想通りのレース展開になった時はやっぱり楽しいですね」と語った。

 ピエールさんは国内レースに加えて世界選手権でも実況を担当しているが、年に1度しか日本で開催されないレースのなかで最も緊張するのはF1だという。

「観客動員数は一番多いし、日本人ドライバーが出ている時はこちらも思い入れがありますから。海外レースに日本人選手や日本メーカーが出ていると、特別な思いが出てくる方も多いですよね」

「2012年に小林可夢偉選手(当時ザウバー)が3位に入賞した時は、お客さんが一点を見て動いていました。僕がみんなを煽って数万人が同じタイミングで盛り上がったこともありましたが、これは一度経験するとやみつきになります」

 観客を煽るといえば、冒頭にも書いた『Are you ready?』のかけ声だ。そもそもこのかけ声はいつから始まったものなのか。またそのルーツはなんだったのだろうか。

「いつ始めたのかを忘れてしまうくらい昔の話なのですが、僕が駆け出しの頃から、先輩アナウンサーの方が、『1コーナーのみなさん?』とやっていました。それを先輩から受け継がなきゃと思って、僕もグラスルーツのレースの時からコース全域に声をかけていました」

「その時にふと出てきたのが『Are you ready?』という言葉だったんですよね。何かを真似たのだと思います。鈴鹿にはベテランのアナウンサーがいらっしゃったので、先輩のいいところをいただいて、それが自分の個性になりました」

「でも今では、お客さんに『今回は(声かけを)やってくれなかった』と言われちゃうんです。すべての観客席に向かってやりたい気持ちはあるのですが、分刻みでスケジュールが決まっているので時間が取れなくなってしまって……。最初はとにかくお客さんが盛り上がってくれたらいいなという気持ちで始めたのが、最近では義務感に駆られています(笑)」

■「選手としての経験が正確な実況に活きてくる」


関連のニュース