コンチネンタルGT3自体はデビューからさまざまなカテゴリーで活躍をみせているほか、熟成も進んでおり、実力は十分。しかしスーパーGTという新しい舞台で戦うためには、まだ合わせこみが必要な段階でもある。
なかでも、マシンが持つポテンシャルを引き出すには、スーパーGT特有の難しさと対峙しなければならなかったという。それはタイヤメーカーでもコンペティションがあるがゆえのグリップの高さだ。
「シェイクダウンの時、ベースのセットはワークスのMスポーツのほうで推奨されたもので走っていましたが、それはスーパーGT以外のカテゴリーで走っているタイヤに対してバランスをとっているセッティングだったんです」と井出。
「そうすると、(スーパーGTで使用する)ヨコハマタイヤだとグリップが高すぎて、まったく(マシン)バランスが取れない。(Mスポーツの)ワークスエンジニアにも伝えたんですけど、『世界中のカテゴリーで、このセットアップで走っているので、(トラクションコントロールやABSは)ミニマムで走ってください。オフでも問題ないくらい』って。向こうのエンジニアも驚いていましたね」
岡山で開催された1回目の公式テストでは、ブレーキの効き具合にも課題が見つかったという。
「ABSが入りにくいので、ブレーキが効かないように感じるんです。コーナーでのバランスはまったく走れないと感じるレベルだったし、まずはどのブレーキパッドがいいのか、いくつも試していました」
「そこからタイヤのグリップを高いレベルで使うためにはクルマをしっかりとさせなきゃいけないということになって、Mスポーツに、さまざまなパーツもオーダーしました」
ヨーロッパからパーツを取り寄せるとなれば、日本へ到着するまで時間がかかる。そのため岡山での公式テストから、わずか1週間というインターバルで行われた富士公式テストに届いたのはスタビライザーのみ。それでも「(新しいパーツを)入れた分だけの伸びしろは実感した」という。
井出とコンビを組む阪口良平のアタックタイムも上々で、開幕前に、さまざまな制約のあるなかではデビューマシンのポテンシャルは確実につかめたというわけだ。
第1戦岡山では予選23番手、決勝20位だったコンチネンタルGT3だが、井出は「耐久向けのマシンに仕上がっているので、ジェントルマンドライバーが長い距離をコンスタントに走れるように考えられたクルマだなと一番最初に感じました」と手応えを明かす。
「それにストレートが速いクルマなので富士スピードウェイは得意かもしれない。ドライバーとしてもストレートが速いクルマは、レースをやっていて楽ですからね。あとはターボなので、高地のオートポリスなども期待できると思います」
開幕戦ではデータ収集のためと目標にしていた完走を果たしており、ベントレーは間違いなく今シーズン注目の1台と言えるだろう。