近藤監督とチームが考えていたのは、タイヤ無交換の戦略を最大限に活かすために、他車の影響を受けずにできるだけ自分たちのペースでレースを進めることだった。そのため、まずはピットストップで左右のチームと異なるタイミングを狙っていた。左右のチームとタイミングが重なってしまうと、ストップ位置をずらしたり、クルマを斜めに止めるなどでタイムを大きくロスしてしまう。

「コース上の前のクルマの動きを見ながら、後ろ側のピット、そして前側のGT300チームのピットもクルマが入らないことを確認していた。それで斜め止めする必要がなくなったので、ウチはスムーズにピットに入って、スムーズにコースに出れると思っていたんです」

 GT500のトップ5チームはピット作業の準備をしていたものの、実際にはピットに入らなかった。そこで、近藤監督はピットインを指示した。

「タイミングは賭けではなかったけど、すごく悩んだ。要するにSCがコースから去ったと同時にピットの指示を出して間に合うとか、間に合わないとかジャッジが難しい。ギリギリにジャッジしてもピットロード前の白線のペナルティのリスクもあるので、最終的にはみんな不安になっちゃって(笑)、最後は半周くらい前にピットに入れるって決めました」

 その近藤監督の思惑どおり、ピットインもピット作業も、そしてアウトラップもスムーズに進み、上位陣がピットに入って出てきたときにはフォーラムエンジニアリングはトップに立っていた。

「アウトラップも前が空いていたし、ウチはアウトラップはタイヤは温まっているので、他のチームはアウトラップで10秒近く損するのは分かっていた。そこはまず、俺たちがおいしいところを頂こうと。そして実際にクリーンエアの中で走れて、前とのギャップをどんどん縮めることができたんです」

 しかしレース終盤、大きな誤算が起きた。サーキットに晴れ間が見え、気温と路温が徐々に上がってきたのだ。タイヤ無交換で厳しいフォーラムエンジニアリングの直後で、2番手DENSO KOBELCO SARD RC F、3番手ZENT CERUMO RC Fが3秒以内に入り、差がなくなった。

「終盤、晴れてきて、きつかったよ(苦笑)。だけどブリヂストン勢もピックアップがあるだろうと思っていた。それでも気温と路温が上がってきたから、キターっと思って。ヤバかったよ(笑)」

 とは言いつつも、レースも終盤になれば監督ができることは少ない。あとは自分たちを信じるのみ。そこには近藤監督の男気が見える。

「もう、本当にヒヤヒヤしましたけど、最後はじたばたしても仕方ない。そこは本当にヨコハマタイヤを信じていたし、今、ノリにノっているドライバーなので、(佐々木)大樹に任せるしかなかった」

 レースは残り6周でGT300が最終コーナーを飛び出してクラッシュして、赤旗中断。そのままレースは終了した。タラレバで、レースが再開していたらどうなっていたか──

■思わず漏らした、今回の激戦を象徴する本音

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