今季、新たなチームメイトに迎え入れたのは、中山と同じく鈴鹿レーシングスクール(SRS)で腕を磨いてきた後輩の小林崇志で、どちらもGT500で戦った経験を持つドライバー。そんな小林の加入は、マシンセットアップの面でも大きな進化を促すきっかけになったという。
「もともと、この86MCは他のGT3と比べてトップスピードまでの到達速度はイマイチ。だから得意分野、軽さからくるコーナリングスピードとタイヤへの優しさをどう伸ばすか。富士(スピードウェイ)などは1発(のタイム)は出せても決勝はどうしてもツラくなります」
「だからといって、最高速を求めてレイク(角)を減らしてペラペラなウイングを付けても、もうエンジン自体のパフォーマンスもいっぱいいっぱいに近いからエンド(スピード)も伸びないんです。3~4km/hは伸びたとしても10km/hは伸びないので、セクター2やセクター3でのロスの方が大きい」
ダウンフォースを減らしたセットではコーナーへの進入でフロントの回頭性が悪く、結果的にステアリングの舵角が増え、タイヤの摩耗が進んでしまう。それならばとピットでの停止時間短縮やタイヤチョイスに神経を注いだ。
そしてこれまでは、ルーキードライバーと組んでいたこともあり、ある程度「想像するしかない領域」だった予選での路面変化や、条件に合わせたセットアップも、小林との呼吸でひとつ次元の違う領域へ進むことができた。
「Q2に進んでも、ふたりの間で言葉の答え合わせがすぐに終わる。『あいつがこう言うなら、自分の場合はこういう雰囲気』という精度が上がりました」
「そこは毎シーズン1年かけて作り上げてきて、毎年リセットされてきた部分でもありますが、小林の場合はなんというか……慣れる時間がいらない(笑)。今年最初のテストでは、自分がセットを進めて最後に小林が中古(タイヤ)で確認して、最後にニュー(タイヤでアタックする)という予定だったんですけど、赤旗が多くてスケジュールが押したんです」
「そうしたら小林が『中古いらないですよ。そのままニューで大丈夫です』と言ってくれて。で、実際にポンとタイムを出して、クルマの評価をして帰ってきてくれた。その時点で『やっぱもう違うなぁ』って。その辺の判断が早いし、慎重になるべき部分も分かってる。説明が要らないですよね」
そうした味方を得て、今季はかねてから中山が主張してきた大きなセットチェンジにも挑戦することが可能になったという。