レースは50周を過ぎ、首位を行くMOTUL GT-Rと2番手ZENT LC500はともに1分30秒台の攻防で1秒前後のタイムギャップをキープしていたが、折り返しの56周を迎える頃には2台は0.217秒差まで急接近。石浦宏明が松田次生の隙を窺う態勢に持ち込んでいく。
そのまま接近戦が続いた2台は58周目のセクター3からサイド・バイ・サイドの状態になると、続く59周目の1コーナーでも2台並走でピタリと張りついたかのようにクリアし、続くコカ・コーラ・コーナーでインをとった石浦が松田次生攻略に成功。トップドライバー同士のクリーンな勝負で首位に浮上してみせる。
その後方、KOBELCO SARD LC500のセカンドスティントを担当したGT500ルーキー中山雄一が65周目にKEIHIN NSX-GTを、68周目には4番手に浮上していたジェンソン・バトンの1号車、RAYBRIG NSX-GTに対しスリップストリームを使った教科書どおりのパッシングを見せ、上位に顔を出してくる。
後方では62周目に自己ベストの1分30秒908を記録し、その前には19号車のWedsSport ADVAN LC500もオーバーテイクするなど、難しいコンディションでGT500デビュー戦を戦っていた宮田莉朋のau TOM’S LC500が、63周目のエンジンのトラブルからかスモークを挙げてダンロップコーナーでストップし、戦列を去ってしまう。
レースが70周を過ぎ、最後のピットウインドウが開くタイミングで3番手のCRAFTSPORT MOTUL GT-Rが再び先手を取って動き、76周終了で最後の義務ピットへ。48.9秒で平手晃平が最後のスティントへ向かうと、翌周には5番手のRAYBRIG NSX-GTが46秒で山本尚貴を送り出す。
続くラップで首位38号車の石浦が、その2周後には23号車松田がピットへと向かうと、ニスモ陣営の得意のピット作業とミシュランタイヤのウォームアップ性能が再び効果を発揮してトラックポジションを逆転し、MOTUL AUTECH GT-R、ZENT CERUMO LC500、そしてCRAFTSPORT MOTUL GT-Rのトップ3に変化した。
時刻が17時30分をまわり周回数が88周目に入る頃には、5番手争いを展開する山本尚貴と塚越広大のギャップが0.519差にまで縮まってくる。同時に首位攻防の23号車MOTUL GT-R、38号車ZENTの2台も90周目を過ぎて秒差圏内の心理戦へと突入していく。
すると94周目には3番手を走行していた平手晃平のCRAFTSPORT MOTUL GT-Rがタイヤ磨耗かピックアップか、急激にペースダウン。レース前半の33周目にかわした元チームメイト、ヘイキ・コバライネンの逆襲に合い4番手に後退すると、96周目には張り詰めた勝負を展開するRAYBRIG NSX-GT、KEIHIN NSX-GTにも同時に前に行かれてしまう。
90周を過ぎると首位のMOTUL GT-Rは明らかにリヤのグリップが厳しくなり、滑りながら走行する状態に。それでもMOTUL GT-Rはステアリングを握るクインタレッリの気迫溢れるブロックとストレートの速さを活かして2番手ZENTのオーバーテイクを許さない。
しかし迎えた99周目、首位2台の攻防は、1コーナーで立川祐路がインをズバリ。クインタレッリはクロスラインでインに入り抵抗するも立川は下がらず並びかかり、コカ・コーラ・コーナーのインを奪い前に。ZENT CERUMO LC500が薄暮となった18時を前に、ついに首位奪還を果たす。
最大延長時間の18時20分が先か、規定周回数110周完走が先かのギリギリの決着となったレースは、残り6周となった1コーナーで3番手のDENSO KOBELCO SARD LC500に襲いかかったチャンピオン、山本尚貴のRAYBRIG NSX-GTが続くコカ・コーラ・コーナーまでのバトルを制して最後の大逆転で表彰台ポジションを獲得。
ZENT CERUMO LC500の立川祐路/石浦宏明組は2017年以来となる富士スピードウェイでの勝利を飾り、最後の最後までタイヤマネジメントを駆使してフィニッシュへとマシンを運んだMOTUL AUTECH GT-Rは2戦連続表彰台を確保してランキング首位に。3位にRAYBRIGが入り、LC500、GT-R、NSX-GTの3メーカーが表彰台を分け合う、2019年シーズンの混迷を予見する大混戦の500kmとなった。
