このようにトヨタ勢の対抗馬となりうるマシンたちは、軒並み何かしらの原因があって、本来のパフォーマンスを発揮できずにいた。
各車の状況をさらに増幅させたのがタイヤ選択である。ブリヂストンユーザーが今回の予選で履いたスペックを単純な分け方で表現するならば、全GRスープラ勢とSTANLEY NSX-GTがソフトを選択し、ほかのブリヂストン車はハードを選択したという。
基本的には持ち込みは2スペックで、公式練習時にそのふたつを履き比べるが、トヨタ勢はどうやら持ち込んだなかでは『ハード側』(ただし、8、17、12号車に対して相対的にはソフトになる)を選択した模様。
タイヤの性能は『ハード』『ソフト』だけで分けられるような単純なものではなく、コンパウンド、構造、形状なども細かく違い、さらに同じゴムでもそれ自体の剛性によって高速コーナーでの旋回性能が変わってくるという。構造でも一発に有利なものと、ロングに強いものなどもあり、単純比較できない複雑なものだ。
そのため持ち込みの選別だけでなく、アタックの瞬間に何を履くかは、コンディションを細かく予測することが必要になってくる。ところが春の岡山は路気温の変化が大きく、それを困難にさせる。
テスト時は“冬”に近く路温変化は1日最大8℃だったが、本番は“春”であり予選日は12℃と広がった。わずかな温度変化でタイヤのパフォーマンスを発揮するレンジが変わるスーパーGT用タイヤは、それぞれの温度領域で勢力図が変わってしまう。
さらに岡山のコース特性は、ほかのコースと比べて全体のタイム変化が不規則な動きを示すことが多く、「路面にラバーがのるに従って全体のタイムが頭打ちになるかと思えば、いったん落ち着いた後にまた上がりだす」現象もあり、「岡山はよく分からない」と笑うエンジニアもいるのだ。
これに関しては「ラバーがのった後、剥がれるのも早いのでは」と語るタイヤメーカーもいるが、それは完全に解明できてはいない。
このように読みづらい季節、コースを予測して持ち込んだなかで、GRスープラ勢が適切なスペックを選択したことがリザルトに表れたのかもしれない。ただし、タイヤ単体で見れば「ハードもソフトもそんなにタイム差はないはず」(ブリヂストン山本貴彦氏)とのことで、これに先に挙げたトヨタ陣営の対策も関係してくるのだろう。
関係者のなかにはQ1落ちしたなかで「○号車は温度変化に弱い」と、号車特有の特性を挙げる者もいる。また、トヨタ勢の横のつながりの強さも武器になっているようで、それは「タイヤ選択にも表れている」という声もあった。
そのうえで、「今回の予選はトヨタの引き出しの多さが結果に表れているのでないか」と考察を語る者もいる。その差はわずかではあるが、勝者と敗者がはっきりと分かれるスーパーGTは、今年もその戦いはシビアなものになるようだ。