──そんな罰ゲームのような始まりだったのも驚きですが、竹内さんの根性というか、勉強熱心さにも驚きです。

「勉強しないとあのトークショーはできないですね(笑)。当然、『昨日の予選どうでしたか?』とか、決勝への意気込みを聞くだけじゃなくて、8戦もあるので毎戦同じことを聞いてもファンのみなさんに喜んでもらえないじゃないですか。プライベートなことを聞けるタイミングでもあるのでファッションや料理とか、そういう小ネタに挟めるように普段からストーカーしています(笑)」

──J SPORTSのスタッフから「直前までチームのどちらのドライバーが来てくれるのか決まらない」という難しさも聞きました。結局、壇上の6人だけでなく3チーム、12人分のドライバーをフォローしていなければいけないんですね。

「最初はその準備が大変でした。ですけど、あのトークショーの準備していくことによって結構、中継やGTVでも助かっているところがいっぱいあります。結果的に選手のことをもっとよく知れるし、ステージ上で準備した質問を聞くことで選手のみなさんも『この人、わかってくれているな』という信頼関係も出てくると思います。あのトークショーで話ができたからこそ、ポールポジションインタビューや勝利インタビューのときも、たぶんまったくの初対面同士で聞くよりも安心して話してくれていると思いますし、私も安心して聞くことができるので非常に助かっていると思います」J SPORTSピットレポーターの竹内紫麻さん

──スーパーGTの仕事に関わって今年で3年目になるわけですが、この2年間で竹内さんが一番感動した瞬間はいつになりますか?

「去年の最終戦ですね。歴史に残ると言われているレースを2年目で目の当たりにしちゃった感じがあります。ピットレポーターの私はあのチェッカー直前、GT500はこのチームがチャンピオンで、私の担当するGT300はこのチームがチャンピオンになるだろうと予測して、頭の中でいろいろシミュレーションしながらパルクフェルメに向かっていました。ちょうど山下健太選手の近くにいたのですが、山下選手が急に頭を抱え始めたから『え!?』と。そうしたらすぐにサーキットがざわつき始めて、私もピットウォールの方に行ってパッと大型ビジョンを見たらあの大逆転劇が起きていた。私も頭が真っ白になりました。これからチャンピオンのインタビューをするというときなのに」

「私はGT500のインタビュー担当ではなかったですけど、後々にはGT500の方々にもお話は聞くので、ある程度シミュレーションをしていたので、少しパニック状態になって立ち尽くしてしまいました。そうしたらディレクターさんが『今はとりあえずインタビューに行って!』という感じだったので『気を取り直さなきゃ』とインタビューを進めました」

「タイトルを逃してしまった平川亮選手は普段はすごく冷静な方ですよね。そんな平川選手があそこまで感情をあらわにするのは初めて見ましたし、すごく悔しかったのだろうなとも思いました。レース後、二朗さんと一緒に平川選手のインタビューに行きまして、平川選手も対応してくれたのですけど、やはり涙目というか、放心状態という感じで普段は見ることができない表情でした。チャンピオンまであと一歩、ようやく獲れるという最後の最後でガス欠、というのはさすがに……私も日頃の姿を見て取材をしているからこそ、揺さぶられる何かがあったのかなと思います。あの時は私にとって強く印象に残りましたね」

──同じメディアとして、その時の状況はよく理解できます。

「あの最終戦では私も涙目になってしましたが、私の立場を踏まえた上でのポリシーではインタビューのときは絶対に泣かないと決めています。あくまでも選手が主役なので、私は選手の感情を露わにできるよう、邪魔をしないように堪えているのですけど、昨年の最終戦はすごく感情が渦巻いていて、少しだけ涙声というか、声が震えちゃったんです。『いけない!』と思って立て直したのですけど、昨年の最終戦は自分の感情が隠しきれなくなるくらい、ドラマチックなレースだったと思います」

──今年もどのようなドラマが生まれるのか楽しみですが、今年のJ SPORTSは竹内さんに加え、実況のサッシャさん、解説は光貞秀俊さん、そしてピットレポーターで大先輩の高橋二朗さんの4人が中継メンバーとなります。竹内さんは今も他の3人からいろいろと教えてもらったりしているのですか?

「二朗さんはどちらかというと、いい意味で先輩のような振る舞いをしていなくて。これだけ年齢が離れているのに同期感というか、いい意味でちょっとしたライバル感があります(笑)。たとえば、二朗さんは大ベテランですので足で(ネタを)稼がなくてもいいじゃないですか。遠くのピットは私が走って行くから任せればいいのに、二朗さんも走るんです。私としても『私があのネタを話したいのに!』みたいな気持ちがあって、負けじと走ってネタを取りに行くんです(笑)、とてもいい関係です」

「サッシャさんは実況として、レポーターに求められることをたくさん教えてくれます。『こういう情報がほしい』とか、光貞さんも『解説はこういう情報があったら助かる』とかすごく言ってくれますし、フィードバックもしてくれます」

「逆に私たちピットレポート側も実況・解説からこういうフリがあったら嬉しいとか結構、みんなで話し合っていますね。『こういうリポートがふたりからほしかった』とか。視聴者のみなさんがどうしたらもっと楽しく中継を見ることができるかというのを、みんなで考えています」

──これまでで一番バチッとハマった、決まったというレポートは何になりますか?

「これをハマったと言っていいか分からないですが、レース中に実況の方が『どうしてこのクルマが上位に来ているの?』と原因が分からない時に『タイヤ無交換でした!』とすぐに情報を上げられたときとかですかね。そういう情報を事前に私が持っていて、みなさんが『なんで?』となっているときに、ポンとレポートを上げられたときは『そういうことだったのか!』と実況席も、番組を見て下さっている方たちも盛り上がってくれますので、そういった情報を入れられたときは良かったなと思います」

──自分で取材したものがタイミングよく伝えられるということは、まさに取材の醍醐味ですね。

「あとは勝利インタビューで(選手が)泣いてくれたら一番嬉しいです。高木真一選手が泣いてくださったときは嬉しかったですね。2019年にチャンピオンに輝いて『17年ぶりのタイトルですね』と聞いたところ、『そんな長いって言わなくていいんだよ~』と話した瞬間に涙が出てきて、聞いてよかったなと思いました。それだけ長い間、頑張ってこられた想いがあったのだろうと思って、私もその涙を見て感動しましたし、その質問は聞けてよかったなと思いました」

──そういった背景をお聞きしてから中継を見ると、また見方も増えていきますね。最後になりますが、竹内さん自身の今シーズンの目標と言いますか、放送で見てもらいたい部分を教えて頂ければと思います。

「目標はいつも変わらないのですけど、スーパーGTはレースが本当に面白いので、その面白さを会場に来れなかったみなさんにも伝えられるようにレポートしていかなくちゃいけないと思います。でも、それは私だけじゃなくて出演者全員で力を合わせてやらないとできないことですので、私は足を引っ張らないように頑張りたいですね。去年もたくさんスタッフで話し合いもしたので、今シーズンもいろいろとすり合わせつつ、最高の中継をできるように頑張りたいなと思います」

 スーパーGTは特に台数の多さにドライバーの数の多さ、そして長いレース距離にサクセスウエイトやタイヤコンペティションなど、複雑な要素がたくさん絡み合ってピットレポーター泣かせのカテゴリーともいえる。その複雑なスーパーGTの魅力を竹内紫麻さんと出演者たちがどのように伝えるのか。今年のJ SPORTSのレース中継、そしてGTVでいろいろな角度からスーパーGTを楽しむことができそうだ。

【プロフィール】
竹内紫麻(たけうち しま)

1991年12月23日生まれ、神奈川県出身
公式HP:https://www.centforce.com/profile/t_profile/takeuchishima.html

●スーパーGT第2戦富士スピードウェイの中継を始め、コラムなどコンテンツ充実のJ SPORTSのスーパーGTサイトはこちら

J SPORTSピットレポーターの竹内紫麻さん

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