直線が長くロードラッグが有利な富士ではGR Supraが速く、ハイダウンフォースが有効な鈴鹿ではGT-RやNSXが速いという昨年の傾向は、このラテラルダクトの形状ともリンクしている。
ただし、前述のようにレーキアングルによってダウンフォースをある程度増減できるGR Supraに対し、GT-RとNSXはどのサーキットでもクルマを下に押しつける力が強いため、ストレートスピードに関しては不利になりやすい。
あらためて昨年から今年にかけての富士の予選セクタータイムを見てみると、やはりストレートを含むセクター1ではロードラッグなGR Supraが安定して速い。高速コーナーが多いセクター2は、車種別のアベレージ、車別の予選ベストタイムともに、GR Supraがトップだった。
ただし、アベレージでのGT-Rとの差はかなり小さい。ハイダウンフォース指向のエアロパッケージをまとうGT-Rは、昨年も鈴鹿で速さを示すなど高荷重セクションを得意とする。富士に関しては(セクター2に位置する)トヨペット100Rコーナーとのマッチングがいい。
「100Rは高速高Gで、我々のクルマはダウンフォース量が多いので、そこは速いかなと。ただ、100Rを速くするのと、セクター3を速くするのはセッティングのトレードオフで、多少相反する部分があるんです。だから、得意な100Rを活かしている関係で、Bコーナー(ダンロップコーナー)ではボトムからアクセルを踏むときにちょっと待つみたいなところはあるかもしれません」と、ニッサン系チーム総監督の松村基宏氏。
実際、GT-R勢はダンロップコーナーの立ち上がりでアクセルオンのタイミングがライバルよりもワンテンポ遅かった。
セクター3のQ1アベレージでは、GR SupraがNSXに0.167秒差をつけた。TCDの湯浅氏によれば、セクター3はおもにタイヤとメカニカルグリップを引き上げるセットアップでタイムを稼いでいるという。ただし、セクター3での一発はARTA NSX-GTがQ2で非常に速かった。
「セクター3は重量がかなり効くので、29㎏重いミッドシップ時代はかなり苦労しました。NSXはセクター3が遅いという変なイメージを持たれていることが嫌だったので、同じ車重で作ったらむしろ速いくらいになり、それは本当良かったです(笑)」と、徃西氏。
「ただし、今回ARTAが速かったのはドライバーの乗り方もあって、ブレーキングであまり奥まで行かず、少し手前で止めてボトムスピードを高めるような走り方をしていました」
ちなみに、NSXは立ち上がり加速が非常にいいとライバルは見ているが、それはシャシーセッティングとエンジン特性の合わせ技によるものだろう。また、狙いとしてセクター3でしっかりとマージンを築き、ストレートエンドの速度では負けたとしても、ブレーキングポイントをライバルよりも奥にとり、それを決勝をとおして維持できるようなセッティングを狙っていると徃西氏はいう。