誰もがタイヤ温存を念頭に入れているのか静かに始まった決勝。スタートで96号車の前に出た優威も8番手をキープして走行します。右側タイヤに負担の掛かる左コーナーは抑えて、GRスープラの武器であるダウンフォースを活かして最終コーナーでタイムを稼ぐ走りでペースを維持。後半スティントの三宅の負担を軽減するために、できるだけ距離を伸ばそうとしていた優威ですが、規定周回数を過ぎてピットインする車両が出だした27周目マークしていた56号車に抜かれてしまいました。
「前を走る60号車はタイヤが厳しいようでペースが遅かったのですが、GRスープラ同士、ストレートで抜くことは難しく、ハイポイントコーナーでインを差しました。向こうはフラフラで制御できないようでここで当たってしまいました。そこにGT500も絡み、そのスキに56号車に馬の背で並ばれてSPでインをとられました」と優威。
できるだけ前半スティントを引き伸ばして、後半スティントの負担を軽減する戦略でしたが、ピックアップにも悩まされて次第にペースダウン1分22秒台が維持できなくなったところでチームが判断して39周目にピットインしました。その直後、43周目にGT500のトラブルによりセーフティカー(SC)が導入されました。SC導入時はピットオープンになってもドライバー交代ができないため、SCのピットタイミングがかからずラッキーだったとも言えますが、2輪タイヤ交換でピット時間を短縮。ポジションを上げたものの、SCによって後続との距離が縮まり、この点は不運でした。
左2輪はニュータイヤ、右は前半スティント時点でもグリップが落ちている中古タイヤ。この状況で迫る後続を堤から交代した三宅は抑えなければなりません。さらに59周目に出たフルコースイエローが解除される60周目、7番手を走る三宅に背後に迫ったのは34号車。
「こういう作戦でいくことは聞いていましたが、(タイヤの左右差)があってまっすぐ走らないくらいでした」と三宅。それに加えて100kgのサクサスウェイトが効き、本来速いはずの高速コーナーでも引き離すことができません。なんとか粘ったものの68周目の第4コーナーでオーバーテイクを許しました。
次に三宅を襲うのは11号車と96号車。レース終盤、右だけでなく左もタイヤが厳しくなり最終コーナーも遅いことからストレートも伸びず、ブレーキも奥までいくのは難しい状況で8番手をキープしたまま、ラストラップを迎えます。SPコーナーに対してアウトから96号車に並びかけられて立ち上がりで接触しました。フェンダーを損傷してタイヤが干渉し、白煙を上げながら9位でフィニッシュ。貴重な2ポイントを死守しました。
「クルマを降りてきた三宅に『かわいがりやな』(相撲等のしごき)と冗談を言いました。SCが出たことを考えると結果論としては4輪交換がよかったとも言えますが、片側2輪交換で前に出ることがベストの作戦と考えました。ふたりとも、厳しい戦いを乗り越えてくれたことですごくいい経験を積めたのではないかと思います。あの最終ラップで三宅がバタバタしていたらアクシデントに巻き込まれて、ノーポイントに終わっていたかもしれない。しかしそこを冷静に対処して、しぶとい力強いレースをしてくれました。明らかに苦しい状況を耐えられることができれば、それはドライバーの評価になるし、自信にもつながります」
「彼らがGT500に上がってほしいとオーナーも思っていますし、そこにいけば、もっともっと厳しい戦いが待っています。サクセスウェイト100kgの状態で、あの作戦をこなしてくれたことを考えると、今後ももっと厳しい作戦を組める可能性が出てきます。理想を言い出せば、注文はまだまだありますけど、本当に今日は三宅も堤もよくやってくれたと思います」(哲也監督)
次戦はオートポリス。依然100kgのサクセスウェイトは積んだままなので厳しい戦いが予想されますが、タイヤメーカーテストをはさみ万全の態勢でチャンピオンを目指した戦いに臨みます。
三宅淳詞のコメント
「(決勝は)タイヤ無交換でもよかったくらい。それでも耐えられる気がします(笑)。苦しいですが、それも楽しいです。作戦は事前に聞いていました。抜きづらいSUGOなのでなんとか抑えていたのですが、最後に抜かれてしまって悔しいですね。その前に34号車を抑えられていたらまた展開が変わったかもしれない。もうちょっとやり方があったのではないかと反省する部分もあります。次のオートポリスは標高が高いのでターボ勢が速く、厳しい戦いになると思いますが、引き続き粘り強いレースをしていきます」
堤優威のコメント
「右側タイヤ2本をセーブしながら50周を目指して走っていたのですが、(スティントの)終盤に2回くらいGT500が微妙なタイミングでインに入ってきて、最終コーナーアウト側のタイヤカスを拾ったり、芝生を走ってゴミがついて、そこから(ラップタイムを1分)23秒台に落としてしまいました。なんとかこじってタイヤカスを落とそうとはしたのですが、あまりやると右タイヤも使ってしまうし、ピットからの指示をもらい39周目にピットインしました。全体的なペースは悪くなかったとは思いますが、GT500をパスさせる際に、もっと落として最終コーナーのイン側をキープした方がよかったのかなと反省点もあります。レース全体としてみると、マシンのポテンシャルをこのレースウイークに仕上げられましたし、100kgを積んだなかで予選Q1を通過できました。決勝も後半きつかったですけどSCが出なかったらもっと結果が出たでしょうし、ポジティブな内容だったと思います。何よりチャンピオンシップに向けてポイントが獲れてよかったです」
