更新日: 2021.11.11 16:33
HOPPY team TSUCHIYA 2021スーパーGT第7戦もてぎ レースレポート
HOPPY team TSUCHIYA
レース結果報告書
2021 SUPER GT Rd.7
ツインリンクもてぎ
■日時 2021年11月6〜7日
■車両名 HOPPY Porsche
■場所 ツインリンクもてぎ
■ゼッケン 25
■監督 土屋武士
■ドライバー 松井孝允/佐藤公哉
■チーム HOPPY team TSUCHIYA
■リザルト 予選8位/決勝5位
試練がチームを強くする
「ムダにドラマチックな展開になったねホピ輔。もしかしてワザとなの?」木野さん、いやいや、そんなことボクしないです、本命レースなのに。本命レースだったからこそ、緊張のあまりのお漏らしだったのかな……。
こんにちは。ボクはホピ輔(本名 HOPPY Porsche)です。スーパーGT第7戦もてぎにおけるHOPPY team TSUCHIYAの戦いをボクがレポートします。冒頭のやりとり、木野竜之介トラックエンジニアがボクにツッコミを入れているのは土曜日の『事件』についてです。
公式練習の走り出し、佐藤公哉くんがまず持ち込んだタイヤ2種類を確認して、そのあと同じように松井孝允くんが2種類のタイヤを確認しました。孝允くんが「今まで一番乗りやすい」と無線で絶賛するくらいに木野さんが決めた持ち込みセットはうまくコンディションに合っていました。
リヤエンジンのボクは高速コーナーやS字のような切り返しが苦手。でもトラクションはかかるから低速コーナーからの立ち上がり加速が武器です。夏場はエンジンが冷えなくてパワーが出ないけど、秋から冬だったらそんなこともなく、だからこそ、低速コーナーがたくさんあるツインリンクもてぎが舞台の第7戦はボクにとって『本命』レースだったのです。
タイヤ選択も終えて、ロングランの確認に移ろうかというタイミングでエンジンルームから白煙が……。オフィシャルからも指摘されて緊急ピットインしました。オイルフィルター付近から少しオイルが漏れている状態でした。チーフメカの武藤良明さんが応急処置してくれてコースに戻りますが、やっぱりオイル漏れは止まらず、走行を断念せざるを得ませんでした。
原因が突き止められないので、この場での補修は諦めてスペアエンジンへの交換をチームは決断しました。こういうときもボクの場合、リヤエンジンなので簡単ではありません。それでもなんとか武藤さんたちメカニックのみんなのがんばりのおかげで予選には間に合って作業完了しました。
ただし、大事な公式練習ではほぼ朝のタイヤ比較しかできておらず、ラバーが載った路面にどうセットアップが合っているのかいないのかは出たとこ勝負。予選Q1突破は孝允くんになんとかしてもらうしかありません。
じっくりタイヤを温めて計測2周目にアタックしましたが、セクター1ではまだピークグリップに到達しておらず1’47.168。3周目も続けてアタックして1’46.957。セクター4では少しグリップが落ちていましたがうまくまとめてくれました。この時点で8番手。ぎりぎりQ1突破できると思ったら、その後タイムを更新されて9番手へ転落。ボクの本命レースはここで終わった。そう思いました。9番手ということは予選17位以下が確定なのですから。いくらコーナー立ち上がりが武器といっても、ガンガン直線で追い抜いていけるほどのスピードは持っていません。
しかし、ボクがピットに戻る前、ピットではみんなが落胆していましたが、レースディレクター無線を聞いていた土屋武士監督は何か興奮気味でソワソワしていました。走路外走行とジャッジされベストタイムを抹消されたクルマが上位にあったのです。そのことを聞いたピットが一気に盛り上がったのは言うまでもありません。首の皮一枚でつながりQ2に進出。公哉くんもアタックをがんばって8番手のグリッドを得ることができました。
もし持ち込みセットが外れていたら、もしエンジン交換が間に合わなかったら、そしてQ1で落ちていたら得られなかったポジションです。気持ちは走り出しで上がり、トラブルで大きく落ち込み、予選にエンジン交換が間に合ったことで上がり、Q1敗退が一瞬確定して落ちて、Q1『復活当選』でまた盛り上がって、本当にジェットコースターみたいな1日でした。
「今年一番のハイライトかな。25号車らしい(笑)。ボクは今日、観客みたいに眺めてただけ。タワー3階へエンジン交換の嘆願書を持っていったのが唯一の仕事。それ以外はぜんぶみんなで決めてやってくれた。なにがあっても安心してみていることができた」と武士監督。244号車のテクニカルディレクターをやっているしチーム全体をみる立場で、個々の仕事は任せる方向を目指してきて、今回みたいなピンチでも、しっかりチームが機能したことに武士監督は満足していたみたいです。
決勝では今回も前戦オートポリスから始めた乗る順番を踏襲しました。タイヤを守れることが武器の孝允くんがスタートをやって、タイヤを早く発動させることが得意な公哉くんがセカンドスティントを担当します。タイヤの摩耗量についての不安はなかったのですが、どのような推移でタレていくのか、公式練習でまったく確認できていなかったので、いつも以上にいろいろな選択肢を持ちながら、戦況次第で作戦を決めていく方針で臨みました。その選択肢のなかにはタイヤ無交換も入っていました。
タイヤ無交換はピット作業時間を短縮することで、コース上のポジションアップを狙う作戦であることは言うまでもありませんが、これを成立させるためには4輪の負荷が均等であることが条件です。FIA-GT3のなかでは比較的車重の軽いボクですけど、何度も言うようにリヤエンジンだから、前後重量配分は後ろ寄り。タイヤ無交換は簡単なことではありませんし、ボク自身は昨年の最終戦で無交換を成功させていますが、今回はトラブルでちゃんとタイヤのマイレージ確認ができてないのでデータが足りません。
スタートのグリーンランプが点灯。前の60号車が少し加速のタイミングがずれて、その後ろの56号車も巻き添えを食うように加速が鈍りました。孝允くんはそこを見逃さず、1コーナーの飛び込みで強敵の2台をパスして6番手に浮上しました。
孝允くんはそこからムリに前を追うことはせずにタイヤの状況変化に集中。無線でタイヤの状態を伝えつつ周回していきます。木野さんは、前にひっかかる、あるいはピットアウトしたときにひっかかるクルマが出てくることを避けるタイミングを選んでピットインさせると決めていて、25周目にピットインしました。
孝允くんとしてはけっこうリヤタイヤが厳しい感じがあったので無交換ではなくリヤ2輪交換をチームにリコメンドしていました。タイヤ交換したものの公哉くんに交代した後は、路面にラバーが載り過ぎているためかグニュグニュとしたグリップ感のなさに苦しんでなかなかペースが上げられません。ボクがピットインした2周後、88号車は目の前へピットアウトしてきたのですが、それを追うまでの元気はなくポジションをキープして、上位がピットインを終えた40周過ぎは7番手を走行しました。
その後、タイヤトラブルでリタイアする車両があり、47周目には6番手浮上、53周目には61号車がスピンしたことで5番手浮上して59周目、5位でフィニッシュを迎えました。今季これが最高位です。そして参戦2年目のボクにとってのスーパーGT最高位でもあります。
レース後、ピットで交換したリヤタイヤをみると摩耗具合も表面の荒れ方も問題なく、結果的にはタイヤ無交換でもいけたかもしれないと木野さんは少し残念がっていました。4位もいけたのかな……。しかし武士監督は前日に続きこの結果に満足していました。
「2台走らせていたら、必ずどちらかに不運がふりかかって結果が出ないということがあるものだけど、今日はひとつも不運がなかった。2台両方ともやり切ったと断言できるレースを経験できるとは思っていなかった。チームオーナーとして違う景色がみえた気がする。過去2戦取り組んできて、安心してみんなに任せられるようになったことが一番大きい。25号車はいろんなヒトの協力によってはじめて成り立っているチームだけど、本当に先につながるレースができたと思う」
武士監督は、ここぞというときだけ身につけるお守りをこのレースには持ってきていたらしいです。それだけ期するものがあったのでしょう。レースは理詰めの世界だけど、最後は運とか人間力とかに頼らざるを得ないところが面白いのかな。次はボクが苦手な富士が舞台の最終戦。でもボクもやれることをすべてやって力を出しきりたいと思います! 応援よろしくおねがいします。
松井孝允のコメント
「今日は戦っていいと武士監督からも言われていたこともあり、失敗を見逃さなかったのがスタートのポジションアップにつながりました。その結果、誰にもフタされることなく自分のペースで走ることができました。どちらかというとスタートに苦手意識があるのですが、任されたからにはそれを克服する責任もあると思っています」
「しっかり佐藤選手にタイヤの状態をインフォメーションしつつ走っていましたが、後半相当きつくなるのは予想できました。しかしそんな厳しい状況でも任せることができるとわかっていたので心強かったです。ゆくゆくチャンピオンを獲るためには、自分ひとりの力では足りません。チームとして力を合わせることが必要ですし、それが今回できた気がします。誰もがミスなくがんばった結果だと思います。」
佐藤公哉のコメント
「前半の孝允さんがポジションを上げてくれて、いいタイミングでピットに入ったのでそのポジションをキープできました。ボクのスティントでは、そこからペースは維持できましたが、全般を通して苦しかったです。しかしポジションを守りきれたのは、いいセットアップで送り出してくれたチームのおかげです。感謝しています。終わってみればタイヤ無交換にチャレンジしてもよかったかなと、武士監督や木野エンジニア、みんなとレース後に話し合いました。いずれにしてもチームみんなで力を出し切れたと思います」
土屋武士監督のコメント
「本当に強くなったね、と言えるレースウイークだったと思います。正直、順位は平凡だと思いますが、今シーズン、ポルシェには厳しい性能調整がかけられているなか、みんなモチベーションを保ち続け、大一番となる今回のレースにそれぞれが自分の力を出し切れたことが強くなった証しだと思います」
「こういうレースをしていればチャンスが来たときにはしっかり掴みとれると思いますし、その機会が必ず訪れてくれると信じています。そしてこのメンバーならやってくれると思いますので、応援して下さっているみなさんには本当にお待たせしてしまっていますが、必ず一緒に喜べる時が来ると思いますのでもう少しお付き合いくださいm(__)m」
「次戦は最終戦です。来期にも繋がるような、みんなが出し切ったと言えるようなレースをして締めくくりたいと思います。次戦も応援よろしくお願い致します!」