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スーパーGT ニュース

投稿日: 2022.12.24 13:25
更新日: 2022.12.24 13:51

【GT300マシンフォーカス】フロントフェンダーは「20パターン以上」足まわりも独自設計のSyntium LMcorsa GR Supra GT

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スーパーGT | 【GT300マシンフォーカス】フロントフェンダーは「20パターン以上」足まわりも独自設計のSyntium LMcorsa GR Supra GT

 CFDによるSyntium LMcorsa GR Supra GTのL/D値はオリジナルよりも上がったそうだ。だが、実際に走らせてみると「期待していたのとは、少し違うデータになってしまいました」と小藤エンジニア。

「本来の狙いとしてはフロントのダウンフォースが欲しかったです。リヤはウイングの角度などで調整ができますけど、フロントは造形ですべて決まってしまいます。ですので、フロント(のダウンフォース)をマックスにしておきたいというところでいろいろと行い、(CFD上では)結構いいデータが取れました。ですが、実際に走らせてみるとフロント(のダウンフォース)が上がる以上にリヤの効率が良くなってしまいました」

 前後のエアロバランスはシーソーのような関係だ。フロントを上げればリヤが下がり、リヤを上げればフロントが下がる。そして走行風を最初に受けるフロントは、その部分を起点に風の流れを変えることでクルマ全体の空力に大きな影響を与える。実車風洞テストも行ったオリジナルのGR Super GTは、前後のエアロバランスが優れていたということだ。

 フロントカウル、さらにフロントのアンダーパネルも刷新した2022年仕様のSyntium LMcorsa GR Supra GTは、そのエアロバランスがリヤ寄りになってしまった。当初の予定はフロントのダウンフォースを増やしオーバーステア傾向になることを狙ったが、その思惑とは逆にリヤのグリップが増し、アンダーステアが強くなってしまったのだ。

「前後バランスを取るのに最初の2戦くらいはだいぶ苦労しました」という。Syntium LMcorsa GR Supra GTは、第3戦鈴鹿で今季初入賞(9位)、第4戦富士では予選でもシングルグリッド(7番手)を得て、表彰台まであと一歩の4位、その後も第5戦と第6戦で入賞を続け、第6戦SUGOでは予選2番手も獲得している。

 また、フロントカウル刷新は良い副作用も生み出した。リヤの空力効率が上がったことで、ウイング角度を寝かせられるようになったのだ。実際、第2戦と第4戦富士、予選Q1の最高速は、GR Supra GT勢でいずれもトップだった。

スワンネックタイプのリヤウイング
スワンネックタイプのリヤウイング
Syntium LMcorsa GR Supra GTのリヤディフューザー
Syntium LMcorsa GR Supra GTのリヤディフューザー
Syntium LMcorsa GR Supra GTの左側サイドステップ
Syntium LMcorsa GR Supra GTの左側サイドステップ

 なお、フロントカウルの刷新を可能にした理由も記しておきたい。それは、OTGではフロントバンパーのような大きなパーツもドライカーボンで成形できるオートクレーブを自社完備していること。フロントカウルという大物の刷新は当然コストがかかるが、OTGではコストをそれほど気にすることなく製作できるのだ。チームのメカニックたちは、端材を使ってカーボンコンポジットの成形を日頃から練習しており、自社完備で時間もかけられるため高精度で仕上げられたというわけだ。

■オフシーズンにはフロント足まわりのジオメトリーを独自設計に変更

 GTA-GT300規定車両にとって、もうひとつの、“最大”のキモとなるのが足まわり。外からは見ることができない部分であり、どのチームにおいても「見せたくない、教えたくない」ポイントであるが、Syntium LMcorsa GR Supra GTのポイントは「具体的には言えないけど、ジオメトリー系」と小藤エンジニアが明かしてくれた。

 ジオメトリーは、アームのピックアップポイントを設定されているネジ穴の位置で若干調整することはできるが、大幅な変更にはアップライトごと設計し直す必要があるなど、簡単にできることではない。

「リヤはオプション設定でジオメトリー変更の部品があります」とのことで、2021年の途中から手を加えていたという。そして2021〜2022年のオフシーズン、フロント足まわりのジオメトリーを独自に設計し直した。

「ですが、ものすごくクルマが変わるほどの変化ではないですし、現状で満足しているわけでもないです」

 テストの回数に制約がある現在、ジオメトリーの変更は至難の業だ。レースウイーク中の走行時間も短く、そこではセッティング作業に費やすためジオメトリーの変更を試すことはできない。タイヤメーカー、同一メーカーであってもスペックの違いなどでマシン特性が異なれば、ジオメトリーの最適解も変わってくる。

「まだ探っている途中ですし、この先も満足することはないでしょうね」

 GTA-GT300規定車両にとって、ジオメトリーを含めた足まわりは永遠の課題であり、進化が留まることはない。そして、“エンジニア選手権”とも言うべく、もうひとつの戦いが繰り広げられている。

オフシーズンにジオメトリーを独自に設計し直したというフロント足まわり
オフシーズンにジオメトリーを独自に設計し直したというフロント足まわり
Syntium LMcorsa GR Supra GTのリヤ足まわり
Syntium LMcorsa GR Supra GTのリヤ足まわり
エンジンは他のGR Supra GTと同様に5.4リッターの自然吸気V型8気筒2UR-Gを搭載する
エンジンは他のGR Supra GTと同様に5.4リッターの自然吸気V型8気筒2UR-Gを搭載する
Syntium LMcorsa GR Supra GTのコックピット
Syntium LMcorsa GR Supra GTのコックピット
2022スーパーGT第8戦もてぎ Syntium LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹/河野駿佑)
2022スーパーGT第8戦もてぎ Syntium LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹/河野駿佑)


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