「エンジンはほぼフル改造しています。マフラーもそうですね。エンジンのパワーはノーマルの市販車とは比較にならないくらい出ています。外装に比べてエンジン改造の自由度が高いので、ここにメーカーはもちろん、各チームの色が出ていると思います」

 大久保は昨年までホンダCBR600RRでWSSに参戦していた。今年から乗り替えたカワサキZX-6Rの強みについては、「パワーですね。トップスピードが速いです」と語っている。

 そのエンジンはシーズンで使用可能基数が決まっている。シーズン前のテストで決めたエンジンを登録し、以降はそのエンジンで戦い抜かなければならない。当然、ミッションもここで決まるため、レースごとにミッションを変えることはできない。

「なので、あまりエンジンは壊せないと言われています。ただ、ほぼフルチューンなので、壊れることもあるんです。僕の所属チームであるカワサキ・プセッティ・レーシングはいいチームなので少ないけれど、あまりよくないチームだと、けっこう煙が出ていますね。そういうところでチームの差が出ることもあるんです」

「車体の改造範囲が狭く、レギュレーションで縛られているからこそ、そういうことが起きたりします」

■セッティングではネジのトルクに至る細部まで調整

 改造範囲が大きく制限されているWSSのマシン。レースウイークにおいて、セッティングのポイントはどのあたりになるのだろうか。

「サスペンションは大事です。基本的にノーマルパーツが多くていじれませんから、そのなかでいかにいいところを出すか、がポイントなんです」

「あとはネジのトルクの強さを変えたりとかしますよ。危なくならない程度にですが、多少強くしたり弱くしたり。もちろんタイヤの空気圧調整もします。そういう細かいセッティングをしないといけないんですね」

 前述のとおりエンジンは登録されたものを年間通して使用するためミッションを変えることはできないが、その代わりスプロケットの変更で加速や最高速などを各サーキットに細かく合わせていく。いわゆる“ファイナルの変更”だ。

「世界各国のサーキットによって特色が違うので、どうしても(登録したミッションでは)合わない部分が出てきます。それをファイナルで合わせていくというセッティングをしていくんです」

「交換できるパーツが少ないとなると、そういう細かいセッティングが大きな差につながったりするんですよ」

 小さなセッティングを積み上げて各レースに合わせたマシンを仕上げ、レースに挑む。そんなWSSについて、大久保は「ライダーの仕事が多い」レースだと語る。

「マシンの限界が低いですから……Moto2のようにフレームを変えたり、根本的に変えられませんから。あくまでもメーカーが造ったバイクがベースです。あとは、そのバイクに人間がどうアジャストするのかが大事なんです。物にあまり頼れません。僕はそういうレースが好きなんです」

 大久保が駆るカワサキZX-6RのWSSマシンはこうした制限のなか、細かいセッティングを重ねることによって造り上げられていた。ライダーの順応力がより必要されるマシンだと言えそうだ。

大久保はインタビューを行ったWSSポルトガルで、9位フィニッシュを果たした
大久保はインタビューを行ったWSSポルトガルで、9位フィニッシュを果たした

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