話は変わって、今季、僕が参戦している耐久レースとスプリントレースの違いについてお伝えしたいと思います。今季はELMSで耐久レース、FIA F2でスプリントのレースを戦っていますが、実は耐久とスプリントでは、挑む際のマインドが大きく違います。ELMSとFIA F2の場合だと圧倒的に乗れる時間が違うので、それがマインドの違いにつながっています。
昨年まで参戦していたスーパーGTや全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)では、セミ耐久のGTとスプリントのフォーミュラという違いこそありましたが、両カテゴリーともにフリー走行の時間が充分にあり(スーパーGT:90分/SF FP1:90分/SF FP2:30分)、予選と決勝に向けてそのフリー走行でしっかり準備していけばいいという感覚だったので、スーパーGTとSFでマインドが違うということはありませんでした。
一方、今年参戦しているELMSはフリー走行が複数セッションあるので、予選と決勝に向けてどう使うかを逆算できる時間がたっぷりとありますが、FIA F2はフリー走行が45分間しかないため、まずは45分間の間にしっかりと走り切ること、そしてクルマとタイヤ、さらにほとんどが未経験のサーキットなので、それらをどう学ぶかを見つけなければならないのでかなり難易度が高く、挑む際のマインドはぜんぜん異なります。

逆に言えば、ELMSのような耐久レースの場合は、日本のレースと同じマインドで挑むことができていると感じています。ですので、FIA F2の方が僕はそわそわしているかと思います(苦笑)。FIA F2は知らないコースでのレースが多く、レーシングドライバーにしか共感してもらえないかもしれないのですけど、初めてのコースでのレースは本当に簡単ではありません。
走ることだけではなくて、たとえば、無線で言葉を発することができるポイントも実際に走らなければわかりません。知っているコースであれば、「ここはコーナリング中にも無線で話せる余裕がある」とわかります。
でも、初めてのコースの最初の数周は、無線を使える場所と、ドライビングに集中しつつもステアリング上のダイヤルを操作できる場所を確認することに費やすことになります。それでいてレーシングスピードで、それぞれのコーナーの走り方、攻略方法を考えなければなりません。そういう小さな積み重ねを進めながら走る45分間は本当に難しいです。

違いといえば、ELMSとFIA F2ではレーシングギアにも違いがあります。ELMSのような耐久レースとFIA F2のようなフォーミュラでは使用するヘルメットの規定も異なりますし、バイザーの開口部の広さも違いがあるため、それぞれのカテゴリーで違う仕様のヘルメットを使っています。
ちなみに、僕はFIA F2には晴れ用と雨用の2個、ELMSには1個、WECには1個を用意しています。FIA F2用にもう1つペイントをお願いしているモデルがあるので、今季は全部で6個のヘルメットを用意していることになります。
レーシングスーツやグローブ、シューズなどの場合、WECやELMSではチームの契約するメーカーのものを使用しますが、僕の場合、FIA F2では自分の好みのメーカーのモデルを使用しています。
なかでも僕はレーシングシューズにこだわりがあります。最近はFIA(国際自動車連盟)の新しい規定の影響で足首がギュッと絞まったシューズが多くなりましたが、僕としては足首がフリーで、柔らかく、軽いシューズが好みですね。また、レーシンググローブはメーカーにとっては内縫い、外縫いでも違いがあるのですけど、僕は外縫いが好きです。

さらに日本との違いで言えば、あまり知られていないことかもしれませんが、LMP2とFIA F2には走行中のマシンにドリンクが搭載されていません。
GT500やSFではステアリング上のドリンクボタンを押せばチューブ伝いにレース中も水分補給ができましたので、ここも日本とヨーロッパの違いですね。幸い、昨年のGT500でもSFでも僕は比較的レース中にドリンクを飲むことが少なかったこともあり、そこまでの影響はありません。
2024年シーズンも7月を迎えて暑さも本格化しつつありますが、ヨーロッパは日本ほど暑くはないので、十分に自分の体調も管理しながら今季の後半戦もしっかりと戦っていきたいと思います。それではまた次回のコラムで!
⚫︎今月の“リトモメーター”
三刀流+moreとして世界のさまざまなサーキットを訪れる2024年の宮田選手の移動距離を、フライトマイルで計測。ご本人のアプリのスクショを公開させていただきます。
今回、6月19日〜6月30日の期間で……
⚫︎6月19日〜6月30日
4回の搭乗
2,411マイル
搭乗時間:7時間30分
⚫︎2024年累計
56回の搭乗
108,003マイル
搭乗時間:264時間42分
