では、室内を見ていこう。前席は左右非対称で、ドライバーを中心に設計されている。見やすさを重視した計器類、囲まれている感覚になる高めのセンターコンソール、ブラックボトムのステアリングホイールなど、随所にレースのノウハウが注ぎ込まれている。
シートはサイドのサポートが高く、激しいコーナリング時でも体が動かないように設計されている。前後とバックレストの調整幅も広いため、問題なくベストなポジションを取ることができる。また、アクセルとブレーキのペダルレイアウトにストレスがないのも好印象だった。
ラゲッジルームはリヤにそびえ立つエアロパーツの影響を受けて、重たい荷物を積み込む際は多少苦労する。たっぷり積みこめる広さがあるとは言えないが、ふたり分の鞄や上着を収めるには充分だ。
歴代のモデルが受け継いできたコルベットを象徴する装備のひとつに、クーペモデルに採用された着脱可能なリムーバブルルーフトップがある。外したルーフトップはラゲッジルームにスッポリと収納することができる。着脱の作業は難しくないが、カーボンファイバーのルーフトップは重たいので、ひとりで作業するのは控えたい。
ルーフトップを外した際のオープンドライブ時には、『グランスポーツ』に装備されているBOSE(ボーズ)製のプレミアムオーディオシステムに感動した。室内に配置された10個のスピーカーから迫力のあるサウンドが聴こえてきて、コルベットが奏でる走行サウンドとともに、ドライブの開放感を高めてくれる。
また、コルベットには『エコ』『ツアー』『スポーツ』『トラック』『ウェザー』の5つのドライブモードが用意されている。シフトのすぐ後ろにあるダイヤル式のスイッチで操作でき、ステアリング量、トラクションコントロール、メータークラスターの設定など、最大12の特性を最適にセッティングしてくれる。
サーキット走行を想定し、パフォーマンスを最大限に発揮する『トラック』モードに合わせると、エンジン音もヘッドアップディスプレイの表示も専用モードに変わる。機会があればサーキットで全開走行してみたい……。そんな野望まで持たせてくれた。
2019年7月に、アメリカで8代目が発表されたシボレー・コルベット。60年間受け継がれてきたFRから、最新型からはMRへと駆動レイアウトが変更される。これに合わせ、フロント部分が短くなるなど、プロポーションは大きく変貌する。
60年の歴史を積み重ねてきたFRコルベットの究極形とも言える7代目コルベット。そのドライブフィールは圧巻の一言だったが、同時にMRとなる8代目がどんな世界へ誘ってくれるのかも楽しみになる1台でもあった。