ベースグレードでもゴツゴツとした感触の乗り心地は、N‐ONEの弱点のひとつ。LOWDOWNではその傾向がさらに強まり、ローダウンスプリングを入れただけの安直なチューニングカーのようだと感じた。そして、その悪い印象は残念ながら『RS』でも改善されていない。それでもスポーツモデルとして、ダンパーもスタビライザーも強化されているため、バランスに欠けているということはない。
インテリアは、ホールド性が高そうなコンビシートや、ステアリングのアクセントカラーも含めてスポーティな印象が強い。だがセンタータンクレイアウトの影響もあって、シートポジションは高めだ。シートを交換してもそれほど低くはできないだろう。ミニバン風の直立に近いポジションで落ち着かないのも、スポーティな雰囲気とマッチしない。
それでもパワートレインは“軽”としては上出来で、Sレンジをセレクトすれば小さなボディを軽快に走らせてくれる。ノンターボのグレードでも現代なら充分な速さであり、『RS』にはターボがついてるのだからなおさらだ。しかし、7速MTモード付CVTとパドルシフトを採用したことには疑問符がつく。本気でマニュアル操作させたいなら違ったコンセプトがあるだろうにと常々思わされる。
個性的で独自のキャラクターを持つN‐ONEだが、存在感が薄いのは中途半端な印象が残るためだろう。“N‐BOXをベースに背の低いモデルを作ってみた”という感じなのだ。過去のオデッセイやストリーム、エリシオンといった背の低いミニバンたちは、ライバルに対して圧倒的なハンドリング性能と乗り心地を持っていた。N‐ONEには、残念ながら背の低いことを活かした旨みがない。
背が高いミニバンは無駄な頭上空間が大きく、運動性として収まり感が悪いだけでなく、心地良さは出せない。単に背を低くするだけでなく、そのメリットを追求した新型の開発が進んでいるといいなぁ、というのが今回の結論である。もちろん、“ファニー”な雰囲気は最低条件で。

■ホンダ N-ONE RS 主要諸元
| 車体 | |
|---|---|
| 車名型式 | ホンダ・DBA-JG1 |
| 全長×全幅×全高 | 3395×1475×1545 mm |
| ホイールベース | 2520mm |
| トレッド 前/後 | 1295/1295mm |
| 最低地上高 | 140mm |
| 車両重量 | 860kg |
| 乗車定員 | 4名 |
| 駆動方式 | 2WD(FF) |
| トランスミッション | 無段変速オートマチック |
| ステアリングギヤ形式 | ラック&ピニオン式(電動パワーステイアリング仕様) |
| サスペンション前/後 | マクファーソン式/車軸式 |
| ブレーキ 前/後 | 油圧式ベンチレーテッドディスク/油圧式リーディングトレーリング |
| タイヤサイズ | 165/55R15 |
| エンジン | |
| 型式 | S07A |
| 形式 | 水冷直列3気筒横置 |
| 排気量 | 658cc |
| 内径×行程 | 64.0×68.2mm |
| 圧縮比 | 9.2 |
| 最高出力 | 47kW(64ps)/6000rpm |
| 最大トルク | 104Nm(10.6kgm)/2600rpm |
| 使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
| タンク容量 | 35L |
auto sport 2019年7月19日号 No.1510より転載
