ここまでの活動を引き継ぐ形で、ザウバー・メルセデスは1993年よりF1グランプリへの参戦を開始するも、1995年にはこの関係を解消し、新たなパートナーとしてマクラーレンを選択する。トップチームだったマクラーレンはメルセデス・エンジンを得て躍進、1998年、1999年、2008年にドライバーズ・タイトルを勝ち取ったほか、1998年にはコンストラクターズ・タイトルも手中に収める。
こうした流れを一気に変えたのが2009年のブラウン・メルセデスだった。ホンダがF1から撤退したため、ロス・ブラウンを代表として立ち上げられた新チームはメルセデスにエンジン供給を依頼。ダブルデッカーディフューザーという“違反スレスレ”の空力デバイスで圧倒的なパフォーマンスを獲得したブラウン・メルセデスは並みいるワークスチームを打ち破ってワールドチャンピオンに輝くことになる。
この結果に自信を得たメルセデスはブラウン・チームの買収を決定。2010年からメルセデスの名でF1グランプリに参戦することを発表する。
当初は確固たるアドバンテージを築けなかったメルセデスだが、2014年に回生エネルギーを用いる現行型パワーユニットが導入されると、長年培ってきたハイブリッド・テクノロジーを駆使して異次元のスピードを発揮。2年連続でダブルタイトルを勝ち取り、メルセデスの名声を一気に高めることになった。
こうやって100年間を越すメルセデスのモータースポーツ史を振り返ってみると、みずから自動車を生み出したメーカーだけにその歴史は長いものの、何度も困難に直面し、撤退と復帰を繰り返してきたことがわかる。
もうひとつ、メルセデスのモータースポーツ活動で特徴的なのは、ときには撤退もするが、やるときはなりふり構わずにやり尽くす姿勢が明確な点にある。
