このように、VWはスモール/コンパクトSUV市場では圧倒的な最後発でありながら、似たようなセグメントに1年半で2機種を連続投入する力ワザを見せた。慎重派ではあるが、やると決めたら一気に攻めるのもVWの特徴である。

 Tロックとの棲み分けのためか、Tクロスは小さいだけでなく、中身もあえて「お手軽クロスオーバー」というべきものに割り切っている。

 エンジンも1.0リッター3気筒ターボや1.6リッターディーゼルなどの控えめなものが基本で、駆動方式は全市場でFFのみ。4WDの用意はない。

 Tクロスは細かい仕立てもお手軽感が強い。現在の日本仕様は1.0リッターターボのみで、まだ上陸間もないこともあってグレード構成も簡素。比較的装備が充実した『TSI 1st』が基準で、そこに安全装備やパドルシフト、上級シート、ルーフレールなどを追加した『TSI 1stプラス』がある。

Tクロスには1.0リッターTSIエンジンを搭載。最高出力は116psを発生する
Tクロスには1.0リッターTSIエンジンを搭載。最高出力は116psを発生する

■入門VWユーザーを取り込むための、秘策が盛り沢山

 今回の取材車は上級の『TSI 1stプラス』で、本体価格は335万9000円。額面では同じエンジンを積むポロの上級モデル(TSIハイライン)より約37万円高い。

 ただ、このクルマにはポロTSIハイラインではオプションとなっていレーンキープアシストや駐車支援システム、斜め後方警告などの先進安全装備やナビが標準装備だし、後席スライド機構も付く。実質的にはTクロスのほうが割安なくらいだ。

 ボディサイズや室内空間、タイヤサイズが大きいSUVはいろんな意味で付加価値が高く、よって同クラスのハッチバックより高価に設定されるケースが多い。

 その意味では、Tクロスは珍しいのだが、それだけ、満を持して登場させたスモールSUVへの、彼らの強い期待がうかがえる。

 もっとも、そのぶんポロより安普請だったり、割り切ったところが、Tクロスに散見されるのも事実。とくにインテリア調度品はすべて硬い樹脂部品で、ポロのようなソフトパッドは使われていないし、その樹脂部品もポロのそれより明確に安っぽい。

 地上高はポロより40mmほど拡大している。絶対的に乗り心地が悪いというほどではないが、背高グルマらしいコツコツ感は明確にある。ポロより重心が上がったぶん、サスペンション部品のグレードも上げて……みたいな感触は薄い。

 しかし、これは悪いことではないと思う。室内空間や視界性能はポロより明らかに良好だし、硬めの乗り心地からクルマ動きは必然的にキビキビしたものになっており、これはこれで「若々しくてスポーティ」と表現することもできなくはない。

 Tクロスは今後、ポロより多くの入門VWユーザーを取り込むのが役目だから、旧来的な意味での質感や乗り心地を狙いすぎない仕立ても理解できる。

Tクロスのフロントシート
Tクロスのフロントシート
Tクロスのリヤシート
Tクロスのリヤシート
通常時の荷室容量は455リッターを確保
通常時の荷室容量は455リッターを確保
6対4分割可倒式の後席を倒すと、容量は最大で1281リッターまで広がる
6対4分割可倒式の後席を倒すと、容量は最大で1281リッターまで広がる

■フォルクスワーゲン Tクロス TSI 1stプラス 諸元

車体
全長×全幅×全高 4115mm×1760mm×1580mm
ホイールベース 2550mm
車両重量 1270kg
乗車定員 5名
駆動方式 FF
トランスミッション 7速DSG
タイヤサイズ 215/45R 18
エンジン種類 直列3気筒DOHCターボ
総排気量 999cc
最高出力 85kW(116ps)/5000ー5500rpm
最大トルク 200Nm(20.4kgm)/2000ー3500rpm
使用燃料/タンク容量 プレミアム/40L
車両本体価格 335万9000円

■Profile 佐野弘宗 Hiromune Sano

1968年生まれ。モータージャーナリストとして多数の雑誌、Webに寄稿。国産の新型車の取材現場には必ず?見かける貪欲なレポーター。大のテレビ好きで、女性アイドルとお笑い番組がお気に入り

本日のレースクイーン

Julieじゅり
2025年 / スーパー耐久
ルーキープリティ
  • auto sport ch by autosport web

    FORMATION LAP Produced by autosport

    トランポドライバーの超絶技【最難関は最初にやってくる】FORMATION LAP Produced by auto sport

  • auto sport

    auto sport 2026年1月号 No.1615

    ネクスト・フォーミュラ 2026
    F1からカートまで
    “次世代シングルシーター”に胸騒ぎ

  • asweb shop

    STANLEY TEAM KUNIMITSUグッズに御朱印帳が登場!
    細かい繊細な織りで表現された豪華な仕上げ

    3,000円