更新日: 2024.10.03 21:37
apr 2024スーパー耐久第5戦鈴鹿 レースレポート
ENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE
第5戦 鈴鹿スーパー耐久5Hours Race
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
9月28日(予選)
天候:くもり コースコンディション:ドライ 観客数:6300人
9月29日(決勝)
天候:くもり コースコンディション:セミウェット〜ドライ 観客数:7900人
鈴鹿でポール・トゥ・ウインを達成。小山美姫選手が女性ドライバー初のST-Xクラスウィナーに輝く!
2024年、全7戦で争われるスーパー耐久シリーズに、aprは引き続きFIA-GT3によって争われるST-Xクラスに臨む。5シーズン目となるDENSO LEXUS RC F GT3をドライブするのは永井宏明選手、小高一斗選手、嵯峨宏紀選手、そして新たに加わった小山美姫選手だ。小山選手はCドライバーを担当する。シリーズ第5戦の舞台は、鈴鹿サーキットだ。
開幕戦から登り続けていた表彰台を、前回のモビリティリゾートではアクシデントで逃してしまい、無念のリタイアとなったが、残り1時間まで安定した走りを見せていたのは紛れもない事実。マシンと鈴鹿の相性も悪くない。また登るなら、より高い場所を目指す。
公式予選9月28日(土)14:40〜
スーパーGTでは、レコードタイムがレクサスRC F GT3によって2018年に記録されて以来、いまだ更新されていないほど、クルマ的には相性の良い鈴鹿である。DENSO LEXUS RC F GT3も、昨年は予選、決勝とも3位と、その印象を違えずにいた。
木曜日の走行開始では、まだトップから2秒以上の差をつけられていたが、スタッフの表情は硬くない。実際、金曜日1回目の専有走行では小高選手が2分4秒962を記録し、3番手ながらトップからコンマ3秒ほどの遅れに留めていた。
2回目の専有走行もそうだったが、ピット作業が繰り返される頻度が、普段より圧倒的に多い。後に明らかになるが、これは持ち込みのセットが決まっていたため、変更し続けているのではなく、より良いセットとするための微調整が繰り返されていたのだ。まさに本番に向けて、順調そのものだった。
しかし、このレースウイークで先に結論から言えば、唯一緊張感漂ったのが、土曜日の午前に行われたフリー走行だった。小高選手が早々に2分7秒038を記したものの、その後はピットから離れられず。燃料ポンプのトラブルで交換を強いられていたからだ。しかし、「今でよかった。決勝で出たら、終わっていた」と金曽裕人監督は、これを前向きにとらえたほど。
予選を前にした最終チェックができなかったことに、若干の不安材料がなかったわけではないが、それを超えるスマッシュをAドライバー予選で、永井選手が決めてくれた。計測2周目からのアタックで2分5秒562を記録し、トップに浮上。さらに次の周には2分4秒990にまで短縮を果たし、2番手にさえ約1秒近くもの差をつけたのだ!
そのことは続くBドライバー予選に臨む、小高選手には安心材料、アドバンテージとなった。リスキーな走りを回避してなお、ワンアタックを決めて2分2秒268をマーク。2番手にこそなったものの、合算タイムにおいてDENSO LEXUS RC F GT3は、見事ポールポジションを獲得することとなった。
続いて行われたCドライバー予選には小山選手が臨み、2分7秒149でトップ、Dドライバー予選では嵯峨選手が2分7秒939で3番手に。それぞれユーズドタイヤで、決勝に向けたチェックも行っていた。
永井宏明選手
「フリー走行はちょっとトラブルあって走れなかったんですけど、セットアップ的にはうまいこと進んでいたので、予選には自信持って臨みました。良かったです。コンディションも良くなっていましたね、決勝は、先頭からスタートできるので、そのままの順位を保って走れ、優勝争いができたら良いな、と思っています」
小高一斗選手
「今回はRC Fとコースの相性も良く、予選まで順調に進んでいて、ロングのセットも見られたし、予選に向けての一歩一歩がスムーズに行った結果かなと思います。練習ではニュータイヤ履いていないけど、永井選手のアドバンテージがあったので、スプーンだとか四脱しないような走りを、僕としては置きに行かせてもらいました。前回はトラブルでゴールできていないので、チームとしてしっかりゴールすることが大事ですし、鈴鹿をポールで走れるのは、やっぱり抜きづらいコースだから、かなり有利な状況で走れるので、久しぶりの優勝を目指して頑張ります」
小山美姫選手
「オフィシャルから『液体漏れにて車両チェックしてください』みたいなのがあって、途中で戻ってきましたが、あと2周ぐらいしたかったですね。ガソリン満タンにしたフィーリングも良くて、決して攻めた走りじゃないけど、タイムが良かったので、あと2周ぐらい限界探りたかったというのはありました。明日、ちゃんとゴールできたらいいなって、もちろん1位でね!」
嵯峨宏紀選手
「前回、もてぎで思いのほか苦戦しちゃったんで、今回は絶対獲るつもりで乗り込んでいるので、流れとしては悪くありません。僕の予選では、決勝に向けての満タンチェックとかしたんですが、概ね悪くはないと思います。この後、ミーティングして、明日に備えます」
金曽裕人監督
「最初からポール獲る気で来ていますし、鈴鹿とRC Fはめちゃくちゃ相性いいので、『ここでポール獲りたいねん!』という話です。そんなにブレーキを酷使しないサーキットだし、エアロが効くので、そのパッケージをいちばん使えるのが鈴鹿。だから、昨日からセットを探しているのではなく、セットの微調整をやっていました。持ち込みから悪くなかったけど、もっといいことはないかと引き出しを作ってました。それがしっかりできていたから、ドライバーもベストなセットに合わせていけたんだと思います」
「明日の決勝は普通に走るだけ、メカニカルトラブル出さずにドライバー含めて、ヒューマンエラーを出さないことが目標です。優勝とは言わず、しっかり表彰台立って帰りましょう、無傷で帰りましょう。それができれば十分です」
決勝レース9月28日(日)11:45〜
3戦続いた5時間レースも、今年はこれが最後。まさに山場を迎えることとなる。決勝レースの直前に通り雨に見舞われ、すでにやんではいたものの、路面は濡れたまま。しかし、ST-Xクラスはジェントルマンドライバーがスタートを担当する一台を除き、ドライタイヤをチョイスした。今回、DENSO LEXUS RC F GT3のスタートドライバーは小高選手だ。
フォーメイションラップは1周のみで、レースは開始。小高選手は、一気に逃げることはできなかったが、慎重な走りで後続を前に出さず。3周目にFCY(フルコースイエロー)が提示され、その間に路面状態も向上していたこともあり、解除後にはスパートをかける。そのままリードを広げ続けて、実に30秒もの差をつけた32周目、スタートから1時間12分経過したタイミングで永井選手と交代した。
ST-Xクラスのライバルが、すべて第2スティントにプロを充ててきたが永井選手は一歩も譲らず数周のバトル。最終的には3番手になるも、安定の走りで2台とも有視界に収める6秒差は、絶好のファインプレー。規定の1時間15分を超えて走行し、62周目に嵯峨選手と交代。
この間に4番手となったが、遅れて2回目のドライバー交代を行ったチームがあったことで2番手に返り咲き、残る一台も74周目に仕留めてトップに浮上する。嵯峨選手もそのまま逃げ続け、32秒のマージンを確保。97周目、残り70分を小山選手に託す。
コースに戻ったDENSO LEXUS RC F GT3は2番手だったが、最初の10周をプッシュし、残り1時間を切ったタイミングでトップが最後のドライバー交代を行うと、小山選手のリードは15秒加算され47秒にも!
ペースも安定しており、これをほとんど吐き出さず。小山選手がトップでチェッカーを受け、5時間127周を走り抜いて、今季初優勝を飾った。女性ドライバーがST-Xクラスで勝つのは、これが初めて。また総合優勝としても、N1耐久時代の1993年の第6戦・筑波で挙げた、1クラスの佐藤久実選手選手以来となる快挙でもある。
次回のレースは10月26〜27日に、岡山国際サーキットで第6戦として開催される。シリーズランキングは、この勝利によって3位に浮上。残るは2戦、有効ポイントということもあり、悲願の王座獲得も視野に入ってきた!
永井宏明選手
「地元のコースで勝てるって、本当に嬉しいです。スタートを小高くんが行ってくれて、マージンを築いてくれたので、僕は落ち着いて第2スティントを走ることができました。ちょっと、タイヤライフで性能が落ちたときに、うまく合わせることができないところがありましたが、みんながしっかり走ってくれ、三重県を盛り上げ後押ししてくださったファンの皆さまに感謝しています。こんなに完璧なレースができ優勝は感無量です」
小高一斗選手
「みんな、しっかりパーフェクトで走って、クルマとしてもトラブルなし。みんながしっかり、いい仕事をしていたと思います。今回は予選と決勝、両方ともペースがあったので、戦えるなって思っていたなかで、ペースがあっても勝てないこともあるので、しっかりと結果につなげられたのは良かったです。今年入って初めてで、小山選手が入ってからも初めてで、クルマとしても得意なコースだったので、勝たなくてはいけないサーキットだったので、勝てて良かったです。残り2戦も頑張ります」
小山美姫選手
「女性初のST-Xウイナーになりましたが、このレースに出させてもらえなかったら、こういう結果につながっていなかったので、参戦するきっかけを作ってくれた人たちに感謝したいです。このレースは自分ひとりでは、この結果につながっていないので、チームのおかげだなと思っています」
「このチームにはスーパーフォーミュラに乗っている小高選手がいますし、永井選手はジェントルマンじゃないような走りで、いつも刺激的ですし、嵯峨選手もベテラン。ここで学べることはたくさんあると思うので、しっかりと吸収して、自分の力につなげていくことを目的としているので、そのうえで結果がついてきて、チャンピオンという結果につながったら、いいなと思っています」
嵯峨宏紀選手
「永井選手が速かったから、バトン渡してもらってからは、僕はジェントルマンの方と走っていたんですが、いかに早く抜いてギャップを作って、小山選手につなぐというのが仕事だったんですが、結果30秒ぐらい作れたので、自分の仕事はできたと思っています。ちょっとタイヤが後半キツくなっちゃって、10秒台から抜け出せなくなっちゃったので、タイヤマネージメントがうまく行かなかったのは課題として残りましたが、まずは優勝できて良かったです」
金曽裕人監督
「展開が良かったですね。スタート担当した小高選手も異次元でしたし、永井選手もプロレベルで走りましたし、嵯峨選手も頑張っていたし、小山選手も安定して速かった。さらに『鈴鹿パワー、三重県パワー』というのがあって、地元の永井選手がとてつもなく速い、応援団がいつもの数倍、さらにRC Fの空力とマシンパッケージが非常に合っている。あと、メカニックもドライバーも誰もミスしなかったことで優勝。ほんと勝てて良かった〜」
「公言していた『小山選手を表彰台の真ん中に立たせる』という目標も達成できましたし。レクサスRC F GT3と女性ドライバーのパッケージで優勝、ST-Xでの総合優勝も初だし、記録ばかりの日に応援くださる皆様と立ち会えただけでaprは幸せです。今後、他のサーキットでもこのパフォーマンスを見出すのが課題。残り2戦に対して、チーム全員で小さなことからコツコツと挑みます」