3人の若手が奮闘も速さに苦しむ
トラブル、ペナルティにも泣かされ5位
ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE
第3戦 NAPAC富士24時間レース
2025年5月30日(金)〜6月1日(日) 富士スピードウェイ(静岡県)
入場者数:5月30日:5,000人 5月31日:26,400人 6月1日:23,300人
■PRACTICE スポーツ走行/STMO専有走行
5月28日(水)〜29日(木)
天候:曇り 路面:ドライ
第1戦もてぎでは、終盤に逆転を果たし嬉しい開幕優勝を果たしたKTMS。第2戦鈴鹿はST-2クラスの開催がなく、迎えるシーズンの山場である第3戦富士24時間までの間には、約1ヶ月半のインターバルがあった。ここでKTMSは、改良型の前後、さらに純正改良型のサブラジエター、オイルクーラーを流用するアップデートを実施した。
ただ、この車両は5月8日に行われた公式テストの夜間走行時、ヒットされて大きなダメージを負ってしまった。
そこでチームは、やむを得ず2023年まで使用していたKTMS GR YARISの個体を富士24時間に投入。使用できるパーツを移植して臨むことになった。
そんな第3戦富士24時間は、5月28日(水)のスポーツ走行、そして29日(木)の3回の専有走行で始まった。
長年チームを引っ張る平良響にとって、このKTMS GR YARISは慣れ親しんだ存在だが、富下李央菜、鈴木斗輝哉のふたりにとっては初めてのドライブだ。
ただ、2日間の走行を通じ富下は「違和感なくドライブすることができています」、鈴木も「少し違いはありますが、変な動きをするようなこともないです」とすんなりとドライブすることができていた。
そんな良好な手ごたえを得つつ、チームは5月30日(金)の公式予選、そして24時間レースに向けて準備を進めていった。
■QUALIFY 公式予選
5月30日(金)
天候:曇り 路面:ドライ
迎えた5月30日(金)は、午後0時から公式予選がスタートした。この日は終日雨の天気予報も出
ていたが、午前のうちに雨は止み、濡れた部分は残るもののドライコンディションで迎えた。
まずAドライバー予選に出走した富下は、1分53秒235というタイムを記録。続くBドライバー予選では、鈴木がアタックを担当し、1分52秒645をマークした。
ただ、合算タイムでKTMS GR YARISの順位は6番手。ストレートが長い富士スピードウェイでは、ライバルのランサー勢、シビック・タイプR勢がやはり速い。この速さに対抗するためには、戦略などで工夫する必要がありそうだった。
最後のCドライバー予選では、平良が決勝に向けた準備も進めつつ、1分54秒440を記録。3番手で公式予選を終えた。
■RACE 決勝レース
5月31日(土)〜6月1日(日)
天候:雨〜曇り〜晴れ 路面:ウエット/ドライ
5月31日(土)は、朝から富士スピードウェイには雨が降り続いていた。午前9時50分からのウォームアップはウエットコンディションとなり、一時雨は止んだものの、午後2時30分からの決勝スタート進行では、開始直後から激しい雷雨に見舞われた。
そのため、決勝レースのスタートは1時間遅れ、午後4時にレースの火ぶたが切って落とされた。KTMS GR YARISのスタートドライバーは平良だ。
セーフティカー先導から始まったレースは、すぐに雨が小康状態となり路面は急速に乾いていった。コンディションの良化にともない、平良のペースは少しずつ上がり、一時は3番手まで浮上したものの、長い第1スティントを終えた平良の表情はいまひとつ明るくない。「速さが足りない」と平良は振り返った。
今回、3人で24時間を繋ぐKTMSは、続いて富下がドライブ。接触があったものの、なんとかドライブを終えると、続いて鈴木に交代する。ただ、夜が深くなりはじめると富士スピードウェイには霧がかかり、鈴木は長いセーフティカーランを淡々とこなすことになった。
ただ、長いレースのなかでライバルにはトラブルも発生。KTMS GR YARISの順位は上がっていき、3〜4番手につけることになった。
午前4時45分には濃霧のためレースは一時赤旗中断となるなど、レースは荒れた展開となる。ただ朝になり、霧も少しずつ薄くなると、午前7時30分、ふたたび鈴木がステアリングを握った状況でレース再開。ST-2クラスのライバルとの差を考えると、トップ2のシビック・タイプR勢とは差が開いており、3位が現実的なターゲットとなっていた。
その後も平良、富下、鈴木が3人で交代しながらレースを続けていくものの、たびたび出されていたフルコースイエロー時に追い越しがあったとして、午前10時30分過ぎには60秒のストップ・アンド・ゴーペナルティが課されてしまう。
これで遅れが広がり、さらにフィニッシュまで残り2時間強というタイミングでは、富下のドライブ中に右フロントのハブボルトが折れてしまうトラブルが発生した。
コース上で3輪走行となってしまった富下だったが、なんとかピットに帰り着き、修復を行いピットアウトした。
ただこの作業時にも作業違反があり、再度60秒のストップ・アンド・ゴーペナルティが課されてしまうことになった。
そもそものスピードがトップ争いからは足りず、優勝には厳しいレースではあったものの、それでも表彰台を獲るチャンスはあった。しかしレース後半以降のストップ・アンド・ゴーペナルティとトラブルによってその思いは叶わず、KTMS GR YARISは5位でフィニッシュすることになった。
貴重なポイントは得たものの、KTMSにとっては悔しい一戦ともなった。シリーズを通じて、この悔しさを取り戻すべくチームは一丸となって挑んでいく。
■DRIVERS & ENGINEER VOICE ドライバー&エンジニアコメント
富下 李央菜 RIONA TOMISHITA
今までのキャリアでは夜間走行もこれだけ台数が多いレースも経験したことがなかったので、自分にとっては大きな経験になったと思います。体力は大丈夫だったのですが、夜にも2時間40分ほどドライブしたのときには暗いなかで他のクルマを抜きつつ、抜かされなければならなかったので、その点はメンタルの面で大変でしたね。次戦はSUGOでのレースになりますが、実はまだ走ったことがないんです。平良選手がたくさん教えてくれるので、その点は心配していません。
鈴木 斗輝哉 TOKIYA SUZUKI
途中いろいろなアクシデントもあり、思うようにいかないレースになったと思います。トラブルもそうですが、自分のスティントでもぶつけられたりもしたので、そういうことがなければ表彰台にもいけたのではないかと思います。公式テストでのクラッシュから流れが悪いですが、引き寄せてしまった僕たちドライバー陣にも原因があると思いますし、クルマを作ってくれたメカニックの皆さんに申し訳ない気持ちです。今回完走して学んだことも多いので、次戦に活かしていきたいです。
平良 響 HIBIKI TAIRA
悔しいです! 速さが足りませんでしたし、まさかのハブボルトのトラブルもありました。僕たちドライバーが縁石に乗らないようにするなど、もっともっと気をつけなければいけなかったと思います。そういうのが24時間レースなんですよね。でも、“タラレバ”を組み合わせきっても優勝には届かなかったと思うので、またしっかり検証したいと思います。次戦のSUGOについては、僕たちのGR YARISの方が合っていると思いますので、しっかりと取り返していきたいと思います。
上田 昌宏 MASAHIRO UEDA 神戸トヨペットエンジニア
今回の富士24時間は、公式テストからツキがないレースでしたね。率直に言えば、レース途中には何事もなく終えることができれば表彰台には乗れるだろう……という考えにもなっていたので、改めてレースの厳しさを教えてもらったと感じます。メカニック側にピットシミュレーションのときから不安はあったので、それが出てしまったと思いますね。ただ、これでシーズンが終わりというわけではありません。次戦以降、今回の分を取り戻せるようみんなで協力したいと思います。