「昨日までの練習や富士、もてぎですごく苦労したんですが、なんだろうって追求しているなかで、チームが合わせてくれたクルマがすごく良くて、やっとこの結果につながりました」と坪井。
厳しいコンディションだっただけに、2分31秒089と練習のタイムを上回れなかったものの、ポールポジションを獲得した菅波には、前週のFIA-F4での連勝とも合わせて、勢いさえ感じられる。だが、「みんなにそう言われるんですが、なんか内心そんなことはなくて」と菅波。
続けて「僕としては良かった時の次こそ落とすと、評価の落ち方がものすごく大きいでしょうし、やっぱり『前のはまぐれだったんだ』ってなるのが嫌なので……」と、まさに「勝って兜の緒を締めよ」の心境にもあるようだ。
決勝レースは一転して、完全なドライコンディションとなった。完璧なスタートを決めた菅波だったが、ぴたり坪井だけが食らいついて離れず。何しろ今年の全日本F3チャンピオンとあって、相手にとって不足なし。
菅波は全力で逃げて徐々に差を広げていった一方で、なんと坪井に対してドライビングスルーの指示が。ジャンプスタートに対するペナルティだった。やむなく5周目に坪井はピットに向かうと、もう菅波に敵は存在しなくなっていた。
その後方では激しいバトルを小河諒(神奈川トヨタDTEC 86R)と近藤、そして谷口が繰り広げていた。予選4番手だった小河は絶妙のスタートを決めて谷口の前に出ると、5番手の近藤も1コーナーでこれに続いた格好だ。
「グリッドに着く時、バーンアウトを多めしてタイヤを少し温めたら、いい蹴り出しができました。それに尽きますね」と小河。
一方、「チームメイト同士でやりにくかったけど、お互いフェアにやれました」と近藤は無理をせず。もちろん谷口も隙あらばの構えでいたが、変に絡んで順位を落としてしまえば元も子もない。ただし、3人の間に張り詰める緊張感は、きっと誰にも感じられたはずだ。
そんな後方のバトルをよそにスタートから逃げ切った菅波が2連勝を果たし、2位は小河で、シリーズ唯一の全戦入賞を果たす。そして3位の近藤はランキング2位に急浮上した。
一方、織戸は9位、佐々木は11位に甘んじたこともあり、4位でフィニッシュラインを越えた谷口が2015年以来、3年ぶり3回目の王座を獲得している。
「終わりを優勝で締めくくれて良かったです。連勝ということで、それも良かったですね」と語るのは菅波だ。
「フライングだったようですが、坪井選手もスタートを決めていたので、びっくりしました。(後ろから)けっこうガンガン来ていたので、逃げるのにタイヤを使ってしまいました。それで後半は少しズルズルになってしまって……。今回はマシンも自分も仕上がっていたので、もうちょっと行きたかったというのが反省点です」と4.6秒のリードでは満足できなかった様子。
そして3回目の戴冠なった谷口は「表彰台に立ちたい気持ちはありましたけど、それより大事なことが、僕の中にあったので。結果的に僕は0点でも大丈夫でしたけど、3年ぶりにチャンピオン獲れて良かったです。今年はタイヤの件とか、いろいろスッタモンダがありましたが、僕がいちばん欲しいのはチャンピオンなので、それが獲れて今すごくホッとしています」と素直な胸の内を明らかにしていた。
■クラブマンシリーズは赤旗短縮レースを大島和也が制す


