第7戦の翌日に同じコースで行われた第8戦。オートポリスは前日の夜から濃霧に包まれ、朝はスケジュールどおりの走行開始も危ぶまれたが、チェック走行の約15分前に霧が晴れ、走行は問題なく行われた。ただ、その時点での路面はウエットコンディション。チェック走行は、次第に路面が乾いていくなかで行われた。
それでも単走開始までに路面は乾き切らず、追走進出の選抜は全体の順位ではなく、各グループの上位4名というウエット時の方法で行われた。滑る場所が多かったAグループはやはり点が伸びなかったものの、その後はそう単純ではなく、選手の走り方やラインによって影響は違ったようだった。
Bグループでは目桑が高い車速をマークするとともに振り返しから安定した姿勢を見せて98.67点の高得点を獲得したが、次のCグループで蕎麦切が鋭い振りとキレのある振り返しを見せると、アウトゾーンに向けてベストのラインと姿勢を作り、きっちり踏んで旋回してみせ、99.13点を叩き出してトップに立った。
その後、Dグループでは齋藤太吾が1本目に速くてキレイな走りで98.62点を出したが、それで単走通過を決めたこともあり、2本目は得点度外視の進入を見せたため、得点自体は伸びず、蕎麦切の単走優勝が決まった。単走優勝は獲得ポイントが4点加算されるため、蕎麦切にとっては、やや余裕を持って追走に進出したことになった。
第8戦単走ウイナー:蕎麦切広大(SHIBATA RACING TEAM)MOTUL GR86 SHIBATIRE 31(ZN8)
「昨日から日比野さんが99点を出してくれていたので、その走りと照らし合わせて、“もう少しこうだ”というのは分かっていました。なので、正直、今日は思ったよりも点数が出たとも思いましたけど、良かったなと思います」
⎯⎯今朝のチェック走行ではどうだったか
「路面がハーフウウエットだったので、全然でした……。昨日、(田中)省己さんと決勝のときにぶつかっていたので、その足回りのチェックぐらいという感じでした」
⎯⎯本番の路面は?
「個人的に昨日と変わらなかったかなと思います。ただ朝にウエットで走り、感覚がたぶんズレてしまったので、昨日と変わらないかどうかは定かではないですが、あまり違和感無く走れました」
⎯⎯1本目はどんな感じ?
「1本目は、しっかりゾーンの取りこぼしがないようにするというのを第一に走りました。それで予選通過できる点が出て、2本目はもう昨日の追走中のいい走りができるようにというところを目標にしてがんばって走りました。それがうまく機能したかなと思います」
⎯⎯1本目と2本目で変えたところは?
「とりあえず、第3セクターの返し、アウトゾーンに向けての返しをもっと鋭くして、もう少し奥で返すようにして、最初から最後まで大きな角度をつけて走るといった部分を意識しました。昨年のオートポリスのときには、この86は後ろのグリップが強すぎて、それで苦労していたので、今回はアライメントなどでそれを逃がす方向に、自分が楽するように大きく走りやすいクルマにしたところ、今いい感じにハマっています」
⎯⎯昨日の優勝に続いて、今日の単走優勝は?
「素直に嬉しいです。もちろん大事なのはこれからですが、まずはひとつ自分の気持ち的にも安心できる単走優勝ができてよかったなと思います」
■第8戦追走トーナメント:史上初の親子決勝対決は父の中村直樹が勝利
ベスト16ではまずポイントリーダーの蕎麦切が多田に勝利。同2位の藤野も石川隼也(広島トヨタ team DROO-P)に勝ってベスト8に進出したものの、同3位の目桑がルーキーの中村龍(TEAM MORI)との接近ドリフト勝負に競り負けて敗退してしまう。これで目桑もタイトル争いで若干後退した。
そしてベスト8で蕎麦切は中村直樹と対戦。蕎麦切は先行時のポイントで上まわったものの、接近ポイントで中村直樹に及ばず、ここで敗退となった。ただし単走優勝しているので5位は確定だ。そして、ランキング4位の横井はエンジンブローで敗退。藤野は逆に齋藤太吾のエンジンブローがあって勝ち上がった。
ベスト4に勝ち上がったのは、中村直樹、川畑真人(Team TOYO TIRES DRIFT 1)、中村龍、藤野。中村親子がそれぞれ勝てば、D1史上初の親子対決が決勝で実現することになる。
まずは父の中村直樹が川畑と対戦。お互いに先行でいい走りをしたこともあって、合わせやすかった後追いではビタビタの接近ドリフトを見せたが、進入での寄せが甘かった川畑に対し、進入から接近していた中村直樹が勝った。
そして次は息子の中村龍が藤野と対戦。藤野は後追いでやや小さいラインになってしまったのに対して中村龍はより綺麗な接近ドリフトを決めて勝利。初の決勝進出を決めた。
中村直樹vs中村龍。D1史上初の親子対決は決勝の舞台で実現。1本目は中村直樹が先行し、中村龍は同時振りを見せたものの、1コーナーを小さくまわってしまい、大きく離されなかったが、近いドリフトはできない。中村龍のアドバンテージだが、差は4.6とわずか。2本目は中村龍が先行。中村龍は振り返したあとのラインが小さくなり、ゾーンを外してしまう。大きなミスなく比較的近いドリフトでついていった父・中村直樹の勝利が決まった。
なお、このラウンドの結果、ランキング首位は蕎麦切がキープ。藤野が20ポイント、目桑が34ポイント、横井が37ポイント、中村直樹が50ポイントといったギャップで追う展開で、お台場での最後の2連戦を迎える。

第8戦追走ウイナー:中村直樹(TEAM VALINO × N-STYLE)Silk Blaze Sports N-STYLE GR86(ZN8)
「昨日の少ししょぼかった後追いを今日に向けて昨日の夜いろいろと勉強してきました。特に入り方ですね。見え方と入り方。土曜日の追走を見返して、自分のいる位置やどこにいれば、一番入れて綺麗にいけるかといった部分です。……後追いで入るには、すごいリスクもあったので」
「(単走は)なぜかうまくいきませんでした。99点を狙いたかったのですが、なにをしても全然点が上がらなくなったので、『まぁ、通ったらいいか』って思っていました」
⎯⎯追走では昨日の研究の成果が出た?
「そうですね。思うようにいきました。ただクセで、後追いでサイド引っ張るのが良くなく、それで点数が落ちるのと、内側に入ったりですね。(山中)真生とのときに引いてしまったのですが、それで、『あっ』と思いました。左足ブレーキで待つべきでした。それが蕎麦切選手のときにはしっかろとできたので、そこからは同じような感じでできました」
⎯⎯準決勝でフルマークです。
「蕎麦切選手のときの方が自分としては気合が入っていたんですね。フルマークのときは、なんか“スムーズ”という感じでした」
⎯⎯息子・中村龍選手との決勝は?
「決勝は、すごい嬉しさと心配の両方の気持ちで、もう運動会状態でした。勝負というか、複雑でした。でも嬉しかったです」
⎯⎯決勝の龍選手の出来は?
「龍は、決勝では気負いしていて全然力が出ていませんでした。やはり1からいろいろと教えたのは僕で、その相手だから気負いというかそういった気持ちだったのだろうな、というのは感じました。次に対決するときは、龍の本当の力を引き出して、ガチンコでやりたいです」




