視点を変えよう。フェラーリは願ってもない好機を逃した。ハミルトンにはギヤボックス交換で5グリッド降格ペナルティがあり、さらに予選のパワーユニット不調で最後尾という事態に陥った。ロズベルグを「1対2」で包囲できる情勢だ。それなのに予選Q3アタックでキミ・ライコネンもベッテルもミスと、はやりすぎた。スタート直後の1コーナーでもライコネンが深く突っ込みすぎてアウトサイドへ、そこにベッテルがセンターサイドで行き、空いたインサイドにダニール・クビアトが。無茶な攻撃ではない。ベッテルは無線や会見で非難したが、審査委員アラン・ジョーンズ氏が「レーシングアクシデント」におさめたのは、まっとうな判断だと思う。

 フェラーリ勢が勝機にあせりミスを重ねた週末に、レッドブル・チームは粛々と取り組んでいた。驚いたのはレスダウンフォースの空力セッティングと、さらに強めた前傾車高姿勢でカーバランスを見出していったこと。パワー重視のコースに対し、非力な彼らはセクター3の1175メートルの直線に、それで対抗しようとした。そうするとブレーキング姿勢がナーバスになり、タイヤ・ロックアップ現象となるが、リカルドもクビアトもその挙動が無く、フリー走行からシャープな減速ができていた。

 オーバーテイクの最後の決め手はタイヤの履歴でも、デグラデーションの差異でもなく、サイド・バイ・サイドに持ち込んだ瞬間の「ブレーキング・スタビリティ」だ。これが今年のレッドブルRB12の切り札。スタート直後、1コーナー減速でクビアトにインから刺しこまれたベッテルは、かつて自分が乗っていたマシンだけに「やられた」と感じたのだろう。だから、よけいに感情的なコメントになったのかもしれない。

 あちこちでレッドブル勢は切れ味鋭いブレーキングを見せた。4周目に18番手まで転落したリカルドが、ずばずば抜いて、4位まで挽回したのは恐るべきブレーキング・スタビリティに、ほかならない。コーナー旋回速度でメルセデスに迫るレッドブルは、フェラーリをしのぐ減速力安定性も秘め、第3の存在へと、のしあがってきたような気がする。

 ロズベルグ開幕3連勝、ベッテル2位、クビアト3位、リカルド4位。上海で、きらりと光ったレッドブル勢のパフォーマンス。今シーズンの戦力構図は1戦ごとに現在進行形で変わりつつある。中間勢ではメルセデスのパワーユニットを使うウイリアムズとフォース・インディアが下落して、ひたひたとトロロッソが来ている。ロズベルグ大独走6連勝の裏に、2016年「春のチーム相関図」最新変動が見てとれる。

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