そして、裕毅はラスベガスGPでも予選、決勝といい戦いを見せてくれました。タイヤの使い方、マシン作り、ドライビングの面でより繊細さが求められるラスベガスGPだけに、チームメイトでラスベガス初走行のリアム・ローソンが苦しむ一方、裕毅は持ち前のドライビングの上手さと繊細さを発揮していました。

 決勝でも9位というポジションを守り切る戦いを繰り広げ、自身の能力の高さをアピールできており、今RBと裕毅ができる100点満点の仕事だったと感じます。この仕事ぶりを、RB、そしてレッドブルという裕毅の周囲の人々がどのように評価するのかは非常に興味深いです。

2024年F1第22戦ラスベガスGP インタビューに応じる角田裕毅(RB)

 また、裕毅は海外メディアの取材に応えた際に、レッドブルのシートが相応しいと認めさせるために、チームメイトを「打ち負かし続ける(destroying)」という強めの言葉を使っていましたね。私はいいタイミングかつ、頼もしいと感じました。自分の思い、意思を言葉にすることはすごく大切なことです。

 これが自分の成績や状況が良くないタイミングで発したコメントであれば、destroyingという単語の強さもありネガティブに聞こえてしまうのですが、今の裕毅はチームメイトを打ち負かし続けてきた戦いぶりを通じて自分の速さ、強さを結果で証明しており、今も上り調子です。 

角田裕毅(RB)
2024年F1第22戦ラスベガスGP 角田裕毅(RB)
 

 ラスベガスGPでも10位のペレスを抑え切っての9位ですし、言葉で思いを伝える、アピールするには今しかないと感じます。これだけいい仕事を見せて、結果も出せていれば「なぜ裕毅をレッドブルに乗せない?」と、周りの関係者が動く流れに繋がるでしょう。

 その流れは一度始まれば、止められない激流に繋がります。裕毅が次なるステップを踏むために、今やるべきことがこのように自分の言葉にすることなのかもしれないと私は感じます。正しいタイミングで、自分以外の大きな力を動かすことは、どんな世界でも大切なことです。ただこれも、周囲を納得させる、周囲が動くほどの仕事を続けてきた裕毅の成長の証です。

 2024年シーズンも残る2戦。裕毅にはこの流れを途切れさせることなく、戦い続けてほしいと願います。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)&角田裕毅(RB)
2024年F1第22戦ラスベガスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)&角田裕毅(RB)

【プロフィール】
中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS)のバイスプリンシパル(副校長)として後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。
公式HP:https://www.c-shinji.com/
公式Twitter:https://twitter.com/shinjinakano24

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