2026年は技術的にユニークなパーツやアイデアをどこまで期待できるのだろう。

「予測するのは難しいですね。2022年以降、ルールは非常に厳格で確定的になりました。かつてのFダクトやダブルディフューザー、油圧サスペンションのようなイノベーションは、ルールがもっと緩やかだったからこそ生まれたものです。今はそうした可能性の多くが閉じられています」

「しかし、だからこそ大きな構造物のイノベーションに注目が集まります。サスペンションのデザインや、見た目で分かるボディワークなどは大きな差別化要因になり得ますし、それを実現するための内部構造にイノベーションが隠れています。2022年のメルセデスの『ゼロポッド』のように、表面に出ない部分に多くの工夫がなされるでしょう。2026年も同じようなアプローチになるはずです」

 今年のF1マシンは昨年よりも30kg軽い規定となる。その最低重量をクリアするのはどれほど難しいことなのか。設定が低すぎると思うのか。

「2022年と同じように、かなり厳しいですね。2022年の時は、いくつかのビッグチームが15〜20kgオーバーとなった一方で、このチーム(ザウバー)は逆に15kgほど下回る状態でした。そういうプロセスの強さがウチにはあります。それでも、目標値に到達するのは本当に大変です」

「現状では、うまく目標に届いていると考えています。実際にレーススペックですべてを組み上げ、測定してみるまでは確実なことは言えませんが、数字を削ぎ落とすのは間違いなく挑戦です」

 今年、マシン側の大きな変更としてフロントとリヤにアクティブ・エアロが導入される。マシンのコンセプトや設計、そしてトップスピード、ダウンフォースの考え方にどのように影響したのか。

「フロアでのダウンフォースの効きが以前より弱まった分、他の部分への比重が高まりました。特にリヤウイングはこのマシンにおいて非常に強力なデバイスになります。形状の制限はありますが、SLM(直線モード)でいかに空気抵抗を減らせるかが鍵です。リヤウイングの開発は今後さらに活発になるでしょう」

 可動式エアロで、たとえばアクティブ・エアロを『開いた(直線モード)』状態でコーナーの速度域などを試したりすることはあるのだろうか。

「いいえ、それは許可されていません。横Gがかかっている間は使えないルールのはずです。昔、小林可夢偉がいた頃のザウバーでは、Fダクトを使いながら鈴鹿の130Rを駆け抜けていたなんてこともありましたが、今はそういう危険なことはしない方がいいでしょうね(笑)」

 ザウバーから、フルワークスのアウディとなったとなったファクトリーの設備を見て、『最高のマシンを作るためのものはすべて揃った』と言うことができるか。

「近づいています。私たちは単に新しいマシンを設計しているだけでなく、同時に『チーム』を作っている最中です。予算制限(コストキャップ)の中で、マシン開発とチーム構築を同時に行うのはユニークな挑戦です。2026年は巨大なプロジェクトです。知識以外に引き継げるものは何もなく、すべてが新しくなります。同時に多くの新しい人材を迎え、研究開発技術に投資しています。新しいシミュレーターは約18か月後に完成予定ですし、まだすべてが完了したわけではありません。チームとして確実にステップアップしていますが、まだ完成形ではありません。だからこそ、最高の結果を出すために、現実的な時間軸を設定しているのです」

 アウディという大きな看板を背負って参戦するにあたって、マシン開発、そしてエンジニアリング面での強みはどのような部分になると言えるのか。

「2026年に対して野心が低いわけではありません。ただ、1年目ですから、いきなりチャンピオンを獲ると言い張るようなことはしません。エンジニアは新しいレギュレーションが大好きです。白紙の状態から再びクリエイティブになれるからです。過去のマシンの遺産に縛られることなく、ゼロから設計できます。このチームの最大の強みは、非常に現実的で、かつ綿密に計画を立てる能力です。ザウバーの苦しい時代、それを生き抜かせたのはスマートな思考でした」

「アウディの支援を受け、チーム全体が非常に真剣に取り組んでいます。このマシンは2023年半ばにテクニカルレギュレーションが確定する前段階から、何が必要になるかを非常に細かく計画してきました。私はこれまで4つの異なるチームで働いてきましたが、ヒンウィル(ザウバーの本拠地)のメンバーの考え方は非常にユニークで、強みだと感じます。今後、レースに向けてマシンが進化していく姿を見ていただけるでしょう」

 アウディF1チームが掲げている『2030年に優勝争いをする』という目標はどの程度、実現可能だと思っているのか。

「チームの野心と今後の計画を見れば、間違いなく現実的だと思いたいですね。私たちは現実主義者なので、すぐにトップに立つために必要なものがすべて揃っているわけではないと理解しており、少し時間を設定しています。しかし、これは『アウディ』のプロジェクトです。もはや、いわゆる『中堅チーム』ではありません。トップに立たなければなりません。そのためにどのようなステップを踏むべきか、非常に明確な野心を持っています」

⚫︎ジェームス・キー
1972年生まれ、イギリス出身。1998年にジョーダン・グランプリに加入しF1キャリアをスタート。その後、ザウバー、トロロッソ、マクラーレンを経て2023年にザウバーへ。ザウバーがアウディに買収され、今季からアウディF1のテクニカル・ディレクターを務める。

アウディF1 のニューマシンR26の開発を手がけたテクニカル・ディレクター、ジェームス・キー

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