新アイデア・プレゼン→組織内採用決定→設計開始→現物製造→完成チェック(風洞)→速やかに現場へ→フリー走行で実走→タイムアップ→アップデート成功。この流れのどこかに誤りや時間ロスがあってはならない。流れ作業に従事する人々ほとんどは現場に行かず画面でレースを見つめる。そんな彼らに先日の最終ラップ激突は、どう見えたのか──。
くやしさ、虚しさ、情けなさ。個人的な見解を添えると、だから首脳陣は組織全体を代弁する意味で、ふたりのコース上の突っ張り合いに、最終警告をしたと解釈する。少年だったカート時代のように5戦で3回も、じゃれあうのは異常だ。誤解を恐れずに言うならアイルトン・セナとアラン・プロストは、いつもぶつかっていたわけではない。ミハエル・シューマッハもデイモン・ヒルやジャック・ビルヌーブに、あちこちで当たってはいない。
話をシルバーストンで第50回を迎える、イギリスGPに戻そう。EU離脱問題の余波やユーロ・サッカーの番狂わせ(イングランド大敗退)、もう終わりかけの夏模様と、市民に鬱憤がたまる現象が続く大英帝国だ。
ここで連勝中のハミルトンが日曜に勝ったなら3連勝、1960年代のジム・クラーク4連勝に次ぐ記録だ。伝統あるスポーツを歴史ある舞台で楽しみたい、初日から高齢ファンが集うスタンドに、ハミルトンはアウトラップ1周目から手を振って応えた。かつてのナイジェル・マンセルのように、先週あの表彰台ブーイングのあとだけに、彼らから勇気とパワーをもらったことだろう。