F1ドイツGPの決勝レース後、長谷川祐介ホンダF1総責任者の会見場へ行ったが、予定されていた時間を過ぎても主役が現れない。広報がモーターホーム内を探し回っていると、今度はエリック・ブーリエ(マクラーレン・レーシングディレクター)が「ハセガワサンは、どこにいる?」と尋ねてきた。実は、このとき長谷川氏はロン・デニス(マクラーレン・テクノロジー・グループCEO)に呼ばれて、緊急会談を行っていたのである。

 この日、長谷川氏はレース直後にサーキットを離れる予定となっていたのだが、それを知りながら、デニスが急きょ呼び出したのは、どうしても確認しておきたいことがあったからだ。それはトークンを使用してアップデートしたエンジンが、いつ投入されるかということだった。

 ドイツGPの決勝レースで、ホンダのパワーユニットは燃費に苦しんでいた。現在のパワーユニット規定ではレースで使用できる燃料が100kgまでと決まっているため、燃焼効率が大切になってくる。エンジン本体の馬力が上がれば、それだけ燃料を消費するため、燃焼効率を上げなければ「馬力がアップした」とは言えない。「まだ昨年のフェラーリ(パワーユニット)を抜いたと、はっきり言えるレベルにはないと思っている」(長谷川総責任者)というホンダが、パワー感度が高いホッケンハイムで燃費にも苦労することは自明の理だった。

 それでも実際レースで燃料が足りなくなったために、ペースを落とすしかなかったフェルナンド・アロンソが、フォース・インディアのペレスに抜かれてポイント圏外に脱落する姿を見てしまうと、デニスも黙ってはいられなかったのだろう。長谷川総責任者を呼び出して「いったい燃費はどうなっている」と、問い詰めたのだ。

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