もうひとつ考えられるのは、ドライバーが意図的にバイザーを開けていた可能性だ。ニコ・ロズベルグは今年のヨーロッパGPから、ヘルメットをシューベルト製からベル製に変えた。理由はベルのサービスマン、ミシェル・オメントによれば「ウエットコンディションになるとバイザー内が曇るから」だったという。1分間で約150回の心拍数で運転しているドライバーたちは口から大量の息を吐き、ヘルメット内はドライコンディションでも湿度が高くなり、曇りやすい。そのため走行中にバイザーを少しだけ開けるドライバーもいるという。ただしバーガーは「ジェンソンは、そういうことをするタイプではない」という。
そうなると、バイザーを閉じる前に異物がヘルメット内に混入していたのではないかという説が浮上してくる。
フリー走行2回目で、バトンはロングランを開始する前にソフトタイヤでのショートランと、スーパーソフトタイヤでの予選用アタックランを繰り返していた。その間、何度かピットインもしている。ドイツGPは気温が高く、ピットインしたドライバーはガレージに戻されてコクピットに座ったままバイザーを開ける。そのときカーボンブレーキの破片が付着したレーシンググローブで、汗を拭おうと目の当たりをこすり、ヘルメット内にカーボンブレーキの破片が残ったのではないかという説だ。
バーガーは最後に、もうひとつの可能性を指摘した。それは、マクラーレンのコクピットが熱かったことだ。フリー走行2回目でバトンは「コクピットが熱い」と無線で訴えていた。そのため、ふだんはバイザーを開けないバトンが、バイザーを開けてしまったとも推測できる。
土曜日以降、バトンの目に異物が入るという症状が再発することはなかった。基本的にヘルメットとバイザーには問題はなかったことは、はっきりしている。
