
0.9~1.0秒速いが左フロントタイヤのグレイニングが酷くライフが短いというハイパーソフトタイヤの状況では、決勝はウルトラソフトかスーパーソフトでスタートする方が戦略としては優れていることは明らかだった。だから無理をしてQ3に進んで10番グリッドに終わりQ2で使った中古のハイパーソフトでスタートするくらいなら、Q2で敗退し新品のウルトラソフトで11番グリッドからスタートする方が圧倒的に有利だった。
それでもトロロッソがガスリーにフルアタックをさせQ3に進出させたのは、Q3で中団トップが狙える速さがあると自信を持っていたからだ。6番グリッドから決勝をスタートできるなら、そのトラックポジションを取ることはレースを優位に進めることに繋がる。
しかしガスリーはトラフィックの影響もあったとはいえ1周をまとめきれず、プールサイドシケイン出口のイン側バリアに軽くヒットして縁石で飛び跳ねてしまった。これで中団トップの6位から僅か0.160秒差とはいえ、10位に終わってしまったのはチームにとって期待外れだったと言わざるを得なかった。
ホンダの田辺テクニカルディレクターはこう打ち明ける。
「なんとかQ3にいければいいやというようなレベルのクルマでもなかったんです。タラレバでいうと、セクターベストを足すと良いところに行きますし、そこまでの計算は成り立たないとしてももう少し上には行けたはずですし、なんとかQ3に進んで10番手というよりももうちょっと上を狙っていたんです」
予選11位のニコ・ヒュルケンベルグがウルトラソフト~ハイパーソフトという戦略で8位まで浮上してきたように、5周も走った中古のハイパーソフトでスタートしなければならないガスリーは実際には厳しい状況での決勝だった。しかし上位勢が20周弱でピットインして目の前のトラックポジションを取りに行ったのに対し、ガスリー陣営は大きくポジションを失うリスクを覚悟の上でステイアウトし、タイヤをできるだけ長く保たせる戦略に出た。
巧みなドライビングでタイヤを37周も保たせ、ハイパーソフトでハイペースで走行し続けることでセルジオ・ペレスとカルロス・サインツJr.をアンダーカットし、フェルナンド・アロンソより18周若いタイヤで背後に迫り彼のトラブルで3つポジションを上げた。