こうしてウォルフとラウダは、非常に潤沢な資金と、勝てるマシン、そして他のどこよりも優れたエンジンを持ったチームを手に入れた。強力なドライバーたちとともに、素晴らしい2014年シーズンに向けてすべてのことが整ったのだ。そして実際に2014年は素晴らしいシーズンだった。ダブルタイトルを獲得し、その年のほとんどのレースで優勝したのだ。しかしながら、メルセデスにおける最高の仕事は、ブラウンがチームに教え込んだことだ。それは常に一歩前を行けということだ。
2014年に数々のレースで勝ったメルセデスだが、チームは早い時期から2015年のマシンに取り組んだ。大きなアドバンテージがあるおかげで、その数年はさらなるリソースを後継マシンの開発に割り当てることが可能だった。ブラックリーはほぼ常に、現在に集中するよりも(それは主にエンジニアとドライバーの仕事だった)、将来を見据えていた。その後の活躍は、みなさんもご存知の通りだ。
F1の新スターとしてのハミルトンの台頭は、FIAにとっても有益なことだった。特にリバティ・メディアは、F1の公的イメージに新しい風を吹き込むことを目指していた。彼らはカリスマ性のあるチャンピオンを必要としており、ハミルトンはそうなるのに完璧な男だった。
メルセデスとハミルトンは、F1のグローバルな注目度を上げる役目を果たしてきた。現在もF1は勢いがあり注目を集めているが、多くのファンは、他のチームがタイトルを取るところを見たがっている。
2021年には新レギュレーションが導入され、メルセデスの覇権を止める最善のタイミングがきたと言える。だが2019年の後半にはライバルたちもエンジン、シャシー面で追い上げてきている。
メルセデスの成功は永続するものではないだろう。新レギュレーション導入後、我々が新たなチャンピオンを目にするチャンスがあるかもしれない。だが、もちろん2020年が先だ……。我々はハミルトンが7度目のタイトルを獲得するところを見ることになるだろうか?