そのひとつが第19戦アメリカGP前にレッドブルの告発した、燃料流量疑惑だった。1時間100kgと規定された燃料流量を、センサーの操作で一時的に超えているというものだ。FIAはこれを受けて全チームに、「燃料流量計のいっさいの操作を禁止する」という技術指示書を送った。
フェラーリへの疑惑はこれに留まらず、インタークーラーのオイルを燃焼室で燃焼しているのではないかという疑いも浮上。FIAは、追加の技術指示書を出すことになった。
その間もフェラーリは終始、疑惑を否定し続けた。さらにいえば技術指示書が出たあとも、SF90の速さはいささかも衰えていなかった。終盤のSF90がそれまでのような最高速を出していなかったのは、疑惑発覚を恐れてパワーを絞ったからではない。単純にダウンフォースをより重視するセッティングにアプローチを変え、必然的にドラッグも増えたからである。
フェラーリSF90は、決して遅いマシンではなかった。メルセデスと比較しての平均ラップタイムは0.1秒落ちだったし、ポールポジション獲得数も9対10の僅差だった。しかしレースではフェラーリの3勝に対しメルセデス12勝と、大きく差をつけられた。それこそがまさに、2019年シーズンのフェラーリの最大の問題だった。
敗因は多岐にわたる。バーレーン、ドイツ(の予選)、ロシア、アメリカは、信頼性の問題が出た。第4戦アゼルバイジャン(の予選)と第7戦カナダ、日本、第20戦ブラジルは、ドライバーミスだった。そして第9戦オーストリアとメキシコは、稚拙な戦略が足を引っ張った。
その結果2019年のフェラーリは、2017年より18ポイント、2018年より67ポイントも少ない結果しか残せなかった。SF90の本来の戦闘力を考えれば、非常に残念なシーズンだったと言えるだろう。マッティア・ビノット代表は2020年シーズンのマシンに関しては、「よりダウンフォース重視のマシンにする」と、方針転換を明言している。
■フェラーリSF90、2019年シーズン中のアップデート一覧
1)第4戦アゼルバイジャンGP=バージボード、サイドポンツーン脇のバージパネル、フロア
2)第5戦スペインGP=パワーユニット、フロントウイング、エンジンカウル、リヤウイング
3)第8戦フランスGP=フロントウイング、フロア、リヤウイング、ディフューザー
4)第9戦オーストリアGP=フロントウイングピラー、ターニングベイン
5)第10戦イギリスGP=エンジンカウル
6)第12戦ハンガリーGP=バージボード、バージパネル
7)第13戦ベルギーGP=ノーズ、フロントウイング
8)第14戦イタリアGP=パワーユニット
9)第15戦シンガポールGP=ノーズ、フロア、ディフューザー
10)第21戦アブダビGP=ウェストゲートパイプ