2019年シーズンのメルセデスW10は、外見からも想像できるように、2014年から続く技術哲学を継承したものだった。その間にライバルたちの多くがコンセプトを変えて行く中、彼らは頑固にこれまでの路線を踏襲した。
たとえば、サイドポンツーンである。2017年にフェラーリが先べんをつけた、サイドポンツーンの位置を高くする手法は、瞬く間にほぼ全チームがマネをした。しかしメルセデスは古典的な方法にこだわり、ただし開口部はさらに狭くして行った。ホイールベースも長いままだし、多くのマシンがレッドブル式にレーキ角を大きく付けても、彼らのマシンは地面とほぼ平行のままだった。
一方で注目すべきは、ドラッグが大きくなるのは覚悟の上で、最大限のダウンフォースの発生を目指したことだ。その結果2019年型のW10は、低中速コーナーで無敵の速さを発揮した。対照的にストレートでは、(少なくともフェラーリと比較すれば)最高速で劣ることになった。