さらに契約交渉の進め方も新たな手法を採り入れた。たとえば、各グランプリの主催者との開催権料を巡る交渉は、エクレストンが提示する金額に対して、「イエス」か「ノー」の回答をするしかなかった。それがキャリー体制下では二者択一ではなく、話し合いによって双方が納得した形でベストな妥協案を探ることができるようになった。

 たとえば、「サーキット内の看板に関しては、F1開催期間中の権利はこれまではすべてFOM側が持っていましたが、新しい契約では一部、われわれにも権利が与えられました」(山下晋モビリティランド社長/当時)という。

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山下晋モビリティランド社長(当時)

 もちろん、キャリーにも課題はある。合議制を採っているため、決断するまでにどうしても時間がかかってしまうことだ。その最たる例が、今年の開幕戦でのドタキャンだろう。キャリーの決断とその発表が遅きに失したことは事実である。もしエクレストンだったら、もう少し早く対処していただろうという声は、F1関係者からも聞こえてくる。

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今年のオーストラリアGPの中止会見

 しかし、逆の見方をすれば、そういうことを自由に言える雰囲気がいまのF1にはあるということ。そして、それを作ったのもキャリーだ。

 いずれにしても、今年で90歳になるエクレストンに、F1はいつまでも頼るわけにはいかなかったわけで、遅かれ早かれ新しい道を歩まなければならなかった。それがキャリーだった。

 キャリーはF1の将来と自分の役割を次のように述べている。

「F1にはリーダーシップが必要だが、それは独裁的であってはならない。将来に向けて正しい目標を達成する展望を作り上げるのが正しいリーダーだ。そのためには、すべての関係者の声を聞くことだ。時には妥協しなければならないこともあるだろうし、全員を完全に満足させることはできないかもしれない。それでもF1全体が正しい方向に進ませることで、結果的にみんなを満足させたい」

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将来の目標達成のためには「すべての関係者の声を聞くこと』と主張するキャリーCEO

 いま世界は新型コロナウイルス感染症によって、新しい日常「ニューノーマル」を模索し始めている。新しい時代に、F1はどのように立ち向かうのか。キャリーと彼を支える新しい経営陣の手腕に期待したい。

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