じつは2008年のときと今回の一件では、ある共通点がある。それはハミルトンを非難し、トラブルとなったのがイギリスの新聞だということだ。「これは単なる偶然ではない」と語るのは、イギリスの新聞事情を知る、あるジャーナリストだ。
「イギリスでは新聞記者は、特別な存在として扱われている。新聞社の多くがロンドンのシティー西端にあるフリート‐ストリートに本社や支社を構えているため、彼らのことを『フリート・ストリート・メディア』と呼ぶほどさ。彼らには『世論をバックにした正義感』みたいなものがあり、相手がだれであろうと、自分たちが正しいと思ったら容赦なく攻撃することで有名なんだ」
チームによっては、フリート・ストリート・メディア専用の会見を用意して、特別な対応をして気を使うほど。そのひとつにマクラーレンがあるのだが、そのマクラーレンとパートナーを組むホンダが昨年のモンツァでフリート・ストリート・メディアから攻撃されたというのは皮肉なことである。
したがって、アメリカGPではハミルトンがおとなしかったため、フリート・ストリート・メディアも冷静な対応をしたが、再びハミルトンの態度に問題を感じれば、容赦なく叩きに来るだろう。
ちなみにアメリカGPの木曜日のFIA会見でハミルトンの隣に座ったヒュルケンベルグも、メディア嫌いで有名で、囲み取材中に機嫌が悪くなると目の前にあるICレコーダーのスイッチを勝手に切ってしまうという悪癖があるほど。そんなことを知ってかしらずか、木曜日の会見では自分の横にヒュルケンベルグと頻繁にヒソヒソ話をしていたハミルトン。リラックスしていた遠因となってくれていたのかもしれない。