ベッテルとニューウェイが意気投合したのは、性格が似通っているためでもある。ふたりとも競争心が強く、負けず嫌いであるにもかかわらず、自分がスポットライトを浴びるのを極力避けようしているように思える。また、名声や称賛のためではなく、ましてや金のためでもなく、誰が最初にフィニッシュラインを通過するかを争うスポーツに純粋な情熱を傾けている。彼らはいずれもどちらかと言えば内向的で物事を深く考え、ハートは大きくて温かい。

 ベッテルは言う。

「エイドリアンの様々な能力のなかでも一番すごいと感じるのは、そのタスクの核心は何かを決して見失わないという才能だ。F1の世界には、素晴らしい才能に恵まれたエンジニアが大勢いる。何と言ってもF1だからね。だけど、エイドリアンはそのなかでも傑出している。彼にはほかの人には見えないことが見えているんだ」

 ニューウェイが、エアロダイナミシストとして驚くべき能力を発揮してきたのは、レーシングカーの周りの気流が“見える”からだという話は、もはやF1神話のひとつになっている。実際のところ、これは少々誇張された言い方かもしれない。だが、マシンの周囲の気流の複雑さについて、彼がほかの誰よりも深く理解しているのは間違いのないところだ。

「エイドリアンは人前で威勢のいいことを言うような人ではないけど、実際にはものすごく野心的なんだ。いつも物静かで無口なのは、勝てるマシンを生み出すために次の新しいアイデアをフル回転で考えているからじゃないかな。そういった勝利への意志は、少しも弱まったようには見えない。最高のマシンを作りたいという情熱こそが、彼の内なる炎のなかでも一番強いものなのだと思う」

 疑問があれば徹底的に追求する姿勢も、彼らに共通する性格傾向だ。ニューウェイはベッテルについて、こう語っている。

「レーシングカーのテクノロジーに関して、セブは並外れた研究心の持ち主だ。とにかく何でも知りたがり、何でも理解したがるんだ。彼の天賦の才能と知識欲は、まさに最高のコンビネーションだね」

 もし、同じ質問を受けたらベッテルもほとんど同じ言葉を使い、ニューウェイについて同じことを言ったのではなかろうか。

2010年F1最終戦アブダビGP セバスチャン・ベッテル(レッドブル・ルノー)
2010年F1最終戦アブダビGP セバスチャン・ベッテル(レッドブル・ルノー)

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