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F1 ニュース

投稿日: 2021.05.05 22:51
更新日: 2021.05.05 23:18

【中野信治のF1分析/第3戦】反転したレッドブルとメルセデスの勢力関係。よく我慢できた角田裕毅への命題

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F1 | 【中野信治のF1分析/第3戦】反転したレッドブルとメルセデスの勢力関係。よく我慢できた角田裕毅への命題

 今回のアルファタウリのマシンはどっちつかずになっていました。どっちつかずと言うと抽象的な表現ですが、アルファタウリの良さを出そうとすると、クルマがどうしてもアンダーステア気味になってしまったり、それを消そうとするとリヤがナーバスになってしまい、その中間のいいところを掴めていませんでした。

 角田選手もグリップ力を感じないとコメントしていましたが、詳しくはわかりませんが、彼がいままでF1マシンを走らせたなかで一番路面μが低かったサーキットだった思います。そういうコースでの経験もなかったので、その部分で戸惑った面もあったのかなと思います。ですので、今回は走らせ方というよりも、引き出しの部分で角田は苦しんでいましたね。

 同じように、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ/予選13番手、決勝8位)もF1でアルガルベ・サーキットを走った経験はないと思いますが、走りの引き出しの多さといいますか、レースでの習熟していくスピードや過程を見ると、やはり経験の差は大きいなと思いました。ダニエル・リカルド(マクラーレン/予選16番手、決勝9位)も決勝での走りは素晴らしかったですね。

 角田はまだ1年目なので、こういった新しいタイプの路面に若干戸惑った感じがありましたが、僕はこれもラーニングカーブのひとつだと思うので、それほど焦る必要もないと思うし、今回は本当に手堅くレースしていたと思います。

 レースの前半ではちょっとトラックリミットの警告を受けたりしていましたが、そういうのも勉強なのかなと思いました。トラックリミットに関しては、前戦のこともあったのでレースの途中で戸惑っていたように見えたのですが、後半ハードタイヤに交換してからは普通にトップ10で戦えるスピードはあったと思います。チームメイトのガスリーはミディアムタイヤでしたが、全然互角に走れるスピードはありました。

 ですので、僕は全体的な評価としては今回の角田選手は全然悪くない結果だと思っています。スタートでの位置取りもオンボード映像が出ていましたが決して悪くなかった。オープニングラップで少しタイヤをロックさせてバイブレーションも出ていたようでペースを上げることができなかったですが、その苦しい状況でも第2戦の反省を活かしてミスをしないように心がけて走っているように見えました。

 クルマをまだ知らないときに自分をアピールしようとプッシュしてしまうと、往々にしてネガティブな方向にいきかねません。角田はまだ3戦目ですし、そこで何かをしようとする気持ちは当然わかりますし、テストでも速さを見せているので自分自身に自信もあるのだと思います。

 今回は前半のタイヤが厳しくなったのでピットストップを早めたことで後半の組み立てが厳しくなったのですが、ブレーキロックなどのドライバーエラーも含めて、ちょっとしたミスは経験として仕方ががないと僕は思うので、そのあとのリカバリーに関してはうまくできていたと思います。角田選手には焦ってほしくないですね。苦しいときでも今回のような走りを積み重ねていくと絶対にタイミングがあったときに結果を出すことができます。

 とにかくいまはディシプリン(自制心)が大事で、とにかく自分自身をうまくコントロールして抑えて確実にいくとこが重要なことだと思います。クルマを速く走らせる能力を持っているだけに、まずは我慢して確実に結果を積み重ねることで、そのうちクルマがピタッと合って、そのいい流れが来たときにガスリーを上回ってみんなを驚かせるような結果を出せる機会が僕は絶対に来ると思います。

 周りの流れを自分に引き寄せるという意味でも『確実にやる』ということが、いまの角田選手の一番の課題であり、宿題でもあり、命題になります。

2021年F1第3戦ポルトガルGP
毎戦、好結果が期待出来るわけではない。来るべき機会に備え、今の角田裕毅には確実な結果が求められる

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<<プロフィール>>
中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在は鈴鹿サーキットレーシングスクールの副校長として後進の育成に携わり、F1インターネット中継DAZNの解説を担当。
公式HP https://www.c-shinji.com/
SNS https://twitter.com/shinjinakano24


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