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F1 ニュース

投稿日: 2021.05.30 11:20
更新日: 2021.05.30 11:46

【中野信治のF1分析/第5戦】3勝分に値するフェルスタッペンのモナコ初優勝。復調フェラーリと低迷メルセデスを推察

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F1 | 【中野信治のF1分析/第5戦】3勝分に値するフェルスタッペンのモナコ初優勝。復調フェラーリと低迷メルセデスを推察

 2021年F1シーズンも序盤を終え、早くもタイトル候補が絞られてきました。ホンダF1の最終年、そして日本のレース界期待の角田裕毅のF1デビューシーズン、メルセデス&ルイス・ハミルトンの連覇を止めるのはどのチームなのか……話題と期待の高い今シーズンのF1を、元F1ドライバーでホンダの若手ドライバー育成を担当する中野信治氏が解説。第5戦はフェラーリの復調ぶりと2年ぶりの開催となったモナコの難しさについてお届けします。

  ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

 2021年F1第5戦、2年ぶりにレースが開催されたモンテカルロ市街地コースですが、僕が最初に走ったモナコを走った1997年の印象は今でもよく覚えています。それまでアイルトン・セナが走行している時代をずっとテレビで見ていたので、まさか自分がそのモナコに行き、レースができるなんて夢にも思っていませんでした。

 マシンを走らせるという部分では、ピットから出ていった1周目の当時のローズヘアピン(現在はフェアモント・ヘアピン)を回ったときは感慨深かったですね。『ようやく来れたな』という思いになったのを覚えています。当時はシミュレーターもないですし、オンボード映像もほとんど見たことがなかったので、本当にテレビの中だけの世界でした。

 僕はF3のマカオGPも走行したことがないので初めての公道サーキットでした。ですので、本当にピットから出て『ついに来たな』ということと、『こんなところを走るの?』という、シンプルにふたつのことを思いましたね(苦笑)。ガードレールや急勾配、ラインを外すと元に戻れないほどの路面のアンジュレーション(起伏)など、すべてが驚きでした。

 当時は今よりも路面に溝があって、その溝を使ってクルマを曲げていくテクニックなど、いろいろな技もありました。ですが、あまりにもコースが特殊すぎて、それまで自分なりに勉強してきた経験というのが、正直ほとんど役に立ちませんでした。1年目のモナコGPに関しては、それくらいインパクトが強烈でした(1997年は決勝リタイア、2年目は9位完走)。

 今のモナコでも当時からはいろいろと変わったとはいえ、基本のコースレイアウトなどはほぼ同じなので通じるものはやはりあると思います。そのなかで縁石や路面が変わっていたり、プールサイド・シケインの見通しが良くなっていたりしていて、そういった意味では走りやすい方向にいっていると思います。

 モナコを速く走るのに、正直『ドライバーの腕が試される』という表現が正しいのかは僕にはわからないですが、こういった市街地サーキットが得意なドライバー、不得意なドライバーというのは絶対にいると思います。周りがガードレールなので、純粋にマシンを速く走らせるテクニックとはまた少し違うテクニックが必要になります。

 DAZNの解説でも話しましたが、“小技”という部分で、本当にミリ単位で縁石にちょっとだけ乗せたり、乗せる角度をピタッと合わせないとタイヤがグリップしなかったりします。そんなクルマを曲げる技やトラクションを掛けるテクニックを、路面の複雑なアンジュレーションに合わせて正確に出し続けなければいけないわけです。

 ドライバーとしてはそのあたりの感じ方・捉え方というのが、もしかしたら他のサーキットとは若干違うのかもしれません。ですので、このモナコで勝ったドライバーが一番速くてうまいかと言われると、それはちょっと違うのかなと思います。ですが、マシンも含めてモナコを得意とするドライバーはやはり存在するので、それだけ特殊なサーキットですね。

 そんなモナコですが、今回の一番のトピックスはやはりフェラーリが速さを取り戻してきたということになるかと思います。これは正直、意外でした。どういう理由でフェラーリが速くなったのかは、詳しくはわからないですし、今シーズンをこれまでのパフォーマンスを見てきたなかで、この市街地サーキットでフェラーリがいきなり速くなるというのはイメージができませんでした。ですが、フェラーリの速さに驚いたと同時に、フェラーリが上位にくることは、F1界にとって大きく意味のあることだと僕は思っているので、うれしい気持ちもありました。伝統のモナコでフェラーリが速い、すごく面白くなる予感がしましたね。

 これまでのシーズン最初からのルイス・ハミルトン(メルセデス)対マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)という争いに、フェラーリが入ってきて、しかも今回はシャルル・ルクレールが見事ポールポジションを獲得したということもあり、これは否が応でも盛り上がりますよね。

 ただ、なぜモナコではあそこまでフェラーリが速かったのか。明確な理由は今はわかりませんが、高速コーナーが少ないモナコで、足回りを積極的に使っていくコースでは速いのか。ですが、今年のフェラーリのマシンがモナコに合っていたかと言われると、そこまでは合っているようには見えなかったので、本当に不思議です。

 考えられるとしたら、アルファロメオのパフォーマンスもよかったことからも、フェラーリ・パワーユニットのドライバビリティが優れていて、トラクションを掛けることが難しいサーキットに合っていた。また、モナコはエンジン回転数がかなり落ちるので、その部分にトルクや馬力がすごく合っていて、実は中低速が非常に良いパワーユニットなのかなということが考えられると思います。

 モナコはマシンのダウンフォースをあまり効かせなくても走れてしまうサーキットです。もちろん、ダウンフォースが効いていたほうがいいのですが、高速コーナーがないので、ダウンフォースに頼り切ったセットアップではありません。サスペンションなどの足回りをよく使うサーキットですので、もしかしたら市街地用の柔らかいセットアップにフェラーリのマシンが合っているのかなとも思います。

 そして、そんなフェラーリと対象的になってしまったのがメルセデスです。これまでもクルマがすごく決まっていた、というわけではないですが、そこをなんとなく誤魔化し、ハミルトンの技とチームの作戦で勝ちを拾っている部分がありました。もともとメルセデスのクルマは足を使って走れているような印象があったので、モナコでもこれまでと同じように飛び抜けた速さはなくても、結果的にポールポジション争いには絡んでくるだろうなと思っていました。最終的にはバルテリ・ボッタスが予選3番手になりましたが、ハミルトンが7番手になる展開は予想外でした。

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