グリッド上では余裕が感じられたフェルスタッペンがターン1でバランスを乱し、2番手に後退してしまう。しかし首位に立ったハミルトンは、序盤から早くもグリップ不足を訴えた。
ハミルトン:左リヤをチェックしてくれ。グリップがないんだ
他のドライバーからも、タイヤに手こずる無線が続々上がっていた。
カルロス・サインツ:予想よりはるかにデグラデーションがひどいね
ランス・ストロール:タイヤ温度が上がり続けてる
フェルナンド・アロンソ:ひどいオーバーステアだ。フロントにグレイニングが出てる
一方、背後のペレスの存在を気にする3番手バルテリ・ボッタス(メルセデス)に、担当エンジニアのリカルド・ムスコーニはこう言って安心させた。
ムスコーニ:ペレスはすでに、2秒離れているぞ
ペレスとの差が4秒まで広がった6周目前後には、ムスコーニはさらにこう付け加えた
ムスコーニ:素晴らしいペースだ。何でもできるぞ
11周目前後には、ハミルトンもフロントタイヤのグレイニングを訴え始めた。しかしボノは、「まだ交換する必要はない」と励ます。
2番手フェルスタッペンはボッタスとの差を詰められ、逆にハミルトンにはジリジリと引き離される展開だ。
ボノ:フェルスタッペンがターン1でミスした。ギャップは3秒まで開いたぞ
ハミルトン:ペースはまだ大丈夫だ
ここまでギャップが広がれば、たとえフェルスタッペンが先にピットインしてもアンダーカットされる危険は少ない。メルセデス陣営は、そう確信し始めたことだろう。
14周目のシャルル・ルクレール(フェラーリ)を皮切りに、各車が次々にピットに向かう。15周目に角田、ミック・シューマッハー(ハース)、そして16周目にはピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)を抜きあぐねていたダニエル・リカルド(マクラーレン)に、ピットインの指示が飛んだ。
トム・スタラード:ボックスだ。それでガスリーをパスしよう
ガスリーも17周目にピットに向かったが、リカルドの先行を許してしまう。メルセデス陣営では、ムスコーニがひっきりなしにボッタスを励ましつづける。
ムスコーニ:そのままプッシュだ。ただ左フロントは縁石に乗せるな
そしてボッタスは、上位勢で最初に動いた。17周目にピットイン。2秒7先行するフェルスタッペンに、アンダーカットを仕掛けた。
ムスコーニ:行け! このラップ全体が重要だ
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(2)に続く