31周目、ボッタスがこんな無線を投げた。
ボッタス:プランBがいいんじゃないか
プランBはこの場合、2回ストップ作戦のことだろう。ハードタイヤはそろそろ限界に来ている。フェルスタッペンの前にピットインして、フレッシュタイヤで追い上げようと提案したのだ。しかしムスコーニからは、目立ったリアクションはなかった。
32周目にさしかかるところで、ボニントンがハミルトンにこう訊いた
ボノ:ルイス、残り21周だ。タイヤはどうだ?
ハミルトン:左フロントがほとんどダメだ。
その直後、フェルスタッペンに「ボックス!」の指示が飛んだ。ミディアムに履き替え、4番手でコース復帰したフェルスタッペンは、猛然と追い上げを開始した。
35周目、フェルスタッペンはまずペレスに追いついた。担当エンジニアのヒュー・バードから、ペレスに指示が飛んだ。
バード:マックスのラップタイムは(1分)36秒7だ。邪魔しないで行こう
ペレスはすんなりと3番手を譲った。フェルスタッペンも、すぐに感謝を伝えた。
バード:いいぞ、チェコ
フェルスタッペン:本当にありがとう
ペレス:あいつらをやっつけよう
バード:そうだ。レースは続いてる
しかしこの前後から、フェルスタッペンは無線トラブルに見舞われる。
フェルスタッペン:xxxxxx
ランビアーゼ:申し訳ない、マックス。無線の調子が悪い
フェルスタッペン:xxxxx
ランビアーゼ:ダメだ。もし可能なら、マイクの位置を変えてみてくれ
それでも数周後には、なんとか復旧した。
ランビアーゼ(41周目):ハミルトンのラップタイムは(1分)38秒2、ギャップは7秒2だ
ランビアーゼ(42周目):ボッタスはセクター1のペースがコンマ7秒も遅い。フロンタイヤがかなり苦しい
フェルスタッペンは一気にボッタスに追いつき、44周目に一発で抜き去って行った。その直後、ボッタスは不満をぶちまけた。
ボッタス:僕が2ストップだと言ったのを、どうして誰も聴いてくれなかったんだ!
レース終盤、フェルスタッペンのペースはさすがに鈍り始めたものの、ハミルトンとの差は着実に縮まっていた。
ボノ:差は3秒6だ
ハミルトン:わかったから、僕に任せてくれ
しかしチェッカーの1周半前、ミストラルシケインのブレーキングでなすすべもなく抜かれていった。
ボノ:P2だ。よくやった。しっかり(タイヤを)持たせてくれてありがとう
ハミルトン:朝、言ったよね。でもベストを尽くしたよ。ポイントを獲れたし。
「朝、言ったよね」はおそらく、ハミルトンも2回ストップ作戦の可能性を言及していたのだろう。
そしてレッドブルの歓喜の無線。
ランビアーゼ:なんて甘美な勝利なんだ
フェルスタッペン:ははは、やったぜ。無線、ちゃんと聞こえてる?
ホーナー代表:ペイバックだ!借りを返した
これでフェルスタッペンはハミルトンに12ポイント、レッドブル・ホンダはメルセデスに37ポイント差で、両選手権の首位キープに成功した。