レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

F1 ニュース

投稿日: 2021.12.24 18:05
更新日: 2021.12.24 18:09

F1最終戦で高い壁を乗り越えたルーキー角田裕毅。ガスリーを上回った逆転セッティングと角田ライン

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


F1 | F1最終戦で高い壁を乗り越えたルーキー角田裕毅。ガスリーを上回った逆転セッティングと角田ライン

 残る課題はレーススタート、そしてロングランのペースだ。前戦サウジアラビアも、スタートで8番手から12番手に後退。その後のペースもまったく伸びず、13位完走が精いっぱいだった。とくにアブダビでは、グリップに劣るミディアムスタートなだけに、スタートでの懸念は大きかった。

 だが、角田の危なげなさはスタートでもレースでも発揮された。見事な反応で、逆に出遅れたボッタスをパスして7番手へ。DRSトレインで膠着状態となるが、ソフト勢が次々とピットに入り、角田は23周目まで引っ張って暫定3番手。ハードに履き替えていったん10番手に後退するが、再び7番手まで順位を戻した。

 その間38周目には、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)をターン9で仕留めている。その1周前、タイヤ交換したばかりのアロンソが角田をパスした。「コースからはみ出しながらだったので、順位を戻してくれると思っていたらそのままだった」。だから抜いたと、負けん気の強さを見せた。

「今シーズンはアロンソにやられっ放しだったので、あそこは引かずに意地で抜きました」。9コーナーでのアロンソの攻略に関して「たぶん他のドライバーに負けない。少なくともハミルトン以外には」と、絶対的な自信を持っていたようだ。「僕だけアプローチを少し変えて、積極的に縁石を使うようにした」と話す。すると、他のドライバーも角田のラインをまねるようになったそうだ。

 そして終盤52周目、ラティフィのクラッシュでセーフティカーが入ると、チームは6、7番手の角田、ガスリーを続けてピットインさせた。これが好判断だった。順位を落とすことなくソフトを履きコースに復帰した2台は最終周のリスタートで、28周オールドのハードで走っていたボッタスを立て続けにかわし、4、5位でチェッカーを受けた。

 角田は自己ベストの4位。3位表彰台のカルロス・サインツにも0.519秒差まで迫っていた。「最終周の裏ストレートを全開走行中にシフトダウンに入ってしまって、そこでだいぶ失速してしまい3位のチャンスを逃してしまいました」。初表彰台を逃した悔しさを角田は隠さなかった。

2021年F1第22戦アブダビGP バルテリ・ボッタス(メルセデス)と争う角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第22戦アブダビGP バルテリ・ボッタス(メルセデス)と争う角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

■ほんのちょっとの違い

 予選Q3でミスがあったが、最終戦の角田はほぼ完璧だった。安定した速さ、危なげない走りもさることながら、驚くべきはFP1から予選、レースまで、全セッションでガスリーをしのぐタイムを出したことだ。前戦までのペース差を見れば、突如速くなった印象すら受ける。アブダビの角田はガスリーに対して、具体的にどこで優れていたのだろう。

 アルファタウリのホンダ責任者である本橋正充チーフエンジニア(CE)に尋ねると「全体的に少しずつ、という言いかたが合っていると思います。各コーナーで、ちょっとずつガスリーを上回っていた」そんな返答だった。本橋CEは「ふたりのセッティングの違い」を口にした。

「ガスリーは初日からセッティングに問題を抱えて、何度も大きく変えていた。FP3でも手を加えましたが、それでも合わせられず、裕毅との差が広がっていったということですね」

 角田もセッティングはその都度変えていた。しかしその内容は全然違っていたと言う。

「ガスリーは問題があるからこう変えるというスタンス。それに対して裕毅は、ここがちょっと足りてないからこうしようとやっていました。つまり、セッティングの合ってないところを直すのか、パフォーマンスをさらに上げるかための変更かという違いです。ガスリーも大外ししていたわけではなかったんですけどね」

 両者の関係はこれまでずっと逆だった。

「ガスリーは“ここを変えればさらに良くなるはず”と合わせ込んでいき、裕毅は“アンダーをどうやって直そうか”と試行錯誤していました。もちろん大差はつきません。ほんのちょっとしたことですが、その点が逆転したというか、変わった。コースが裕毅のほうにより合っていたというのも要因だとは思います」(本橋CE)

「開幕戦当時の自信をここでようやく取り戻せた」と語った角田だったが、来季に向けては「決して楽観はしていません。マシンの戦闘力もありますが、僕自身もドライビングについて完全に自信を持っているわけじゃない」と慎重に言葉を選んだ。そんな地に足のついた言葉がいっそう頼もしく響いた。角田は2年目に向け、さらに大きく羽ばたく準備ができているようだ。

※この記事は本誌『auto sport』No.1567(2021年12月24日発売号)からの転載です。

2021年F1第22戦アブダビGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第22戦アブダビGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第22戦アブダビGP 角田裕毅とアルファタウリ・ホンダのクルーたち
2021年F1第22戦アブダビGP 角田裕毅とアルファタウリ・ホンダのクルーたち
『auto sport』No.1567の詳細はこちら
『auto sport』No.1567の詳細はこちら


関連のニュース

F1 関連ドライバー

F1 関連チーム