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F1 ニュース

投稿日: 2017.01.03 11:00
更新日: 2017.01.03 13:07

【特集:F1の人気向上策を考える】「スプリントレース化」でファンの心をつかめるのか

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F1 | 【特集:F1の人気向上策を考える】「スプリントレース化」でファンの心をつかめるのか

■F1に必要なのは感動を共有できるような瞬間

 これほど多くの選択肢がある世の中で、観戦に90分から2時間近い時間を要求するスポーツは、人々の関心を引こうとする数多くの番組やイベントとの競争に直面する。実際、それだけの時間にわたってレースを見続けるには、相当なコミットメントが必要とされる。

 いまや人々は、テレビのニュース番組を見たり、新聞を買ったりせずに、アプリやウェブサイトを通じて単発的にニュースを得ることが多くなっている。ビデオにしても、大ヒットするのは長尺のドラマではなく、ほんの数分の作品だ。そして、ツイッターやフェイスブックのようなソーシャルメディアも新たなニュースソースになっていて、それを唯一の情報源としている人さえいる。

 とはいえ、時間のかかるものは、一切受け入れられなくなったというわけでもない。まだ映画館へ出かけていく人は多いし、何時間も続けてコンピュータゲームに興じる人もいる。あるいは、ゆっくりと腰を落ち着けて友人と食事を楽しみ、夜更けまで話し込むことだってあるだろう。

 要するに、長時間におよぶ視聴体験の難しいところは、それでも観ようと思わせるだけの強い魅力がないと、飽きられてしまうことにある。

2016年F1ブラジルGP マックス・フェルスタッペンとニコ・ロズベルグ
2016年F1ブラジルGP マックス・フェルスタッペンとニコ・ロズベルグ

 しかし、だからと言って、周回ごとにあちこちでオーバーテイクが見られ、何度もピットストップがあり、スピンやクラッシュが頻繁に起きればよいということにはならない。ハプニングが多すぎるのは、かえって興ざめだ。むしろ、観ている人の誰もが思わず「ワォ!」と声をあげるような瞬間が、どのレースにも2、3回ずつあれば十分なのだ。

 それは、何周もかけて相手を追い込んだ末の見事なオーバーテイクかもしれないし、トップを争うバトルかもしれない。あるいは、異なるレース戦略を選んだライバル同士の、長く緊迫した駆け引きと頭脳戦でもいい。

 たとえば、2016年のイタリアGPは、正直に言って、あまりエキサイティングなレースではなかった。だが、ダニエル・リカルドがバルテリ・ボッタスに仕掛けて成功させたオーバーテイクは、あのレース最大の話題となり、「オーバーテイク・オブ・ザ・イヤー」と称して絶賛した人も少なくなかった。

 つまり、F1が必要としているのは、ファン同士が「あれはスゴかったね!」と感想を述べ合い、その感動を「共有」できるような瞬間なのである。

■変える必要があるのはレースの長さではない

 最近ではスタート直後にアクションがあるだけで、その後は何ごとも起きないレースが多すぎる。実際、いまやそれほど熱心ではない人々は、スタートを見た後、1時間ほど別のことをしてから、誰が勝ったか確認するために最後の数周だけ見ようとテレビの前に戻ってくる。そんな観戦の仕方でも、重要な場面は見逃していないことの方が多いからだ。

 そして、もしそうした人々がスタートだけを見て、もうテレビの前には戻らず、結果をスマートフォンでチェックするだけになったら、彼らはいずれ完全に興味を失って、F1のテレビ中継を見なくなってしまうに違いない。

 変える必要があるのはレースの長さではない。もっと面白いものになるように、レースのあり方そのものを変えなければならない。現在の2時間近いレースが退屈だとしたら、他には何も手を加えずに時間だけを短くしても、興行としての魅力が劇的に高まることはおそらくないだろう。スタート直後以外はそれほどエキサイティングではないとわかっていても、レースが30分で終わるのなら、最後まで観ていようと思うものだろうか。私にはそうは思えない。


この記事は国内独占契約により英 AUTOSPORT.com 提供の情報をもとに作成しています

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