2年ほど前に、FIAはドライバー同士の接触についてはペナルティを乱発せず、ある程度まで寛容であるべきという方針を打ち出した。厳しすぎるジャッジは、ドライバーにオーバーテイクを躊躇させることにもつながるのだから、これは実に賢明な措置だった。

 それでもなお「レーシングアクシデント」という判定は滅多に出ない。バーレーンGPのスタート直後ルイス・ハミルトンに接触した件で、バルテリ・ボッタスにはドライブスルーのペナルティが与えられた。

 アクシデントの状況を分析してみると、複数の要素が絡んでいたことがわかる。まず、ボッタスの立場から言うと、すばらしいスタートを決めて3番手で最初のコーナーへ進入した。ストレートでの彼のポジショニングから見て、ボッタスは一気にハミルトンに挑んで2番手に上がることよりも、まずは3番手をキープしようと考えていたはずだ。

 ところが、進入での2台のメルセデスの動きによって、状況は少々複雑になる。先頭のロズベルグはポジションを守るためにコース中央付近のラインを取り、これにハミルトンが「つっかえる」形になったのだ。牽制しあっていたメルセデスのふたりは、ターンインのタイミングに迷いが生じて、わずかながら車速を失った。そして、ハミルトンがクロスラインでチームメイトの内側に切り込もうとしたために、イン側のラインからコーナーに入ってメルセデス勢との間合いを詰めていたボッタスと絡むことになったのである。

 ボッタスには、ハミルトンを押し出さずに曲がりきれるのであればインに飛び込む権利があり、その場合、ハミルトンには彼のために最小限のスペースを残す義務があった。ハミルトンはボッタスがいたことには気づかなかったと主張しているが、これを言葉どおりに受け取ることはできない。スタート直後の1コーナーで、しかもロズベルグに行く手を阻まれた状態でコーナーに入れば、実際に見えてはいないにしても、後方からわずかな隙間を狙ってくるドライバーがいることは予測すべきだろう。いずれにせよ、ハミルトンが取ったラインはボッタスの進路と交差し、ボッタスが彼を押し出さずにコーナーを通過できる文句なしのラインを通っていたとしても、接触は避けられなかった。

本日のレースクイーン

七星じゅりあななほしじゅりあ
2025年 / オートサロン
尾林ファクトリー/東京オートサロン2025
  • auto sport ch by autosport web

    RA272とMP4/5の生音はマニア垂涎。ホンダF1オートサロン特別イベントの舞台裏に完全密着

    RA272とMP4/5の生音はマニア垂涎。ホンダF1オートサロン特別イベントの舞台裏に完全密着

    もっと見る
  • auto sport

    auto sport 2025年4月号 No.1606

    [検証]F1史上最大の番狂わせ
    ハミルトン×フェラーリ
    成功の確率

    詳細を見る