Text:Edd Straw / Translation:Kenji Mizugaki

 スチュワードがボッタスにペナルティを与えることは十分に予想できたし、その理由も理解できないではない。だが、F1をめぐる様々な状況を考えるならば、この件はレーシングアクシデントととして不問に付すべきだったのではなかろうか。

 F1のあるべき姿が問われているなかで、疑問の余地なしと思われるのは「ファンがレースとバトルを見たがっている」ということだ。レースはフェアでありながらハードでなければならず、結果として起きるアクシデントや接触を心配しているようでは、ファンの期待には応えられない。

 ファンは、DRSやデグラデーションの大きいタイヤに頼らない、純粋なオーバーテイクが数多く見られるレースを望んでいる。空力的な理由で接近戦が難しいクルマを作っておきながら、果敢なアタックにはミスがつきものであることや、結果的にうまくいかなかった正当なオーバーテイクの試みと単なる向こう見ずとの違いを認めないとすれば、レースは退屈なものになるばかりだろう。重要なのは、限界ギリギリだが一線を越えていない試みと、許容できる範囲を超えた無謀さを見分ける能力だ。

 もちろん、スタート直後の1コーナーでの接触は、すべてレーシングアクシデントと扱うべきだと言うわけではない。たとえば2012年ベルギーGPのスタートでロマン・グロージャンが引き金を引いたマルチクラッシュは、明らかに彼に非があり、ペナルティを受けて然るべきものだった。

 ペナルティの判定をめぐっては、しばしば「一貫性」が要求される。だが、これも実は危険な言葉だ。アクシデントが起きたときの状況は、どれを取ってもまったく同じということはありえず、FIAが「ドライバー出身スチュワード」を起用しようと考えた理由も、客観的な尺度による判定が難しいことにある。ただ、ドライバースチュワードもFIAが示す方針や規則に拘束されているため、いつも良識に従った判断ができるとは限らない。

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